「現金で変わった」パプアニューギニアの食風景 「イモより米が食べたい」と人々が語る背景

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パプアニューギニアの家庭にて、家の外の"台所"(筆者撮影)
あるときはキューバの家庭の台所に立ち、またあるときはブルガリアでヨーグルト料理を探究して牧場へ向かう。訪れた国と地域は25︎以上、滞在した家庭は150以上。世界各地の家庭を巡りながら一緒に料理をし、その土地の食を通じて社会や暮らしに迫る「世界の台所探検家」の岡根谷実里さん。今回はパプアニューギニアの台所からお届けします。

3種類の主食と、米の特別感

パプアニューギニアを訪れたのは、2023年の秋だった。十数年以上越しの念願叶っての訪問で、期待で胸がはちきれそうになっていた。高校地理の授業での「サゴヤシというヤシのでんぷんを主食にする人たちがいます」という話がなぜか心に残り、ずっと行きたかったのだ。

ところが、治安とアクセスの悪さから、つてのない人間が気軽に行くことが困難な土地。ずっと片想いだった。それがついに、文化人類学者の調査に同行させてもらう形で訪問が叶った。

行ってみたらサゴヤシ以上に変わりゆく主食の風景が気になった。特に、その中で、ちらっちらっと登場する現金の存在。滞在後半はずっとお金のことを考えていた。現金は、いかに社会を変えるのだろうか。今回は「現金の食」について書きたい。

この分厚いジャングルに阻まれて歴史的に隔絶性が保たれてきた(筆者撮影)

ここは、パプアニューギニアの北部、東セピック州の村だ。国内線専用空港のあるウェワクから、山道を4輪駆動車で5時間ほど。乗合バスは安全面からやめとけと言われ、村から迎えに来てくれた男性たちの運転で、借りた車で上っていく。ガタガタの山道は、普段車酔いしない私でもきつく、「これは寝るしかない」と目を閉じた。

到着したら、女性たちが出てきて首に花飾りをかけて歓迎してくれた。私たちが寝泊まりする部屋の入り口にも花飾り。「DOZO YORO SHIKU」なんてどこで調べたのか書いた札まで貼ってある。治安とか強盗とか心配していた全身の力が抜けた。

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