ゴーストタウン化させない「小樽」の"生き残り策" 観光都市から「健康で長く暮らせる街」へと進化
高齢者の子ども世帯の多くは札幌市内に転居している。残された親世代も、子世帯とともに転出するケースも少なくない。
ある日のこと。リハビリテーション技師だった櫛引氏がリハビリ担当をしていた80代男性、Sさんはこう吐露した。
「櫛引さん、本当は俺、小樽に住んでいたいんだ。だけど、ここに住み続けるのは難しいから、息子の住んでいる札幌に行く。寂しいけれど」
Sさんは櫛引氏と長年付き合いのある患者で、櫛引氏にも寂しさはあった。だが、それと同時に焦りと危機感を抱いていた。「こうしてまた1人、小樽を愛する者が転出してしまう。このままでいいのだろうか」。
地形や環境が、住み慣れた街を離れる原因になっている――。そうならば、居住地はもちろん、医療機関や公共施設、商店が平地に密集したコンパクトシティにすべきではないか。そんな考えが氏の脳裏をよぎる。
小樽にもなだらかな土地があった
その頃、北海道済生会は移転を検討しており、候補地になったのが、市内で最も平地で、かつ面積のある小樽築港エリアだった。
当該地は旧・小樽築港機関区で、かつて蒸気機関車が保管されていた車庫。なだらかで、宅地や施設の開発に向いている。1985年に策定された小樽港港湾計画に基づき、ウォーターフロント開発され、現在は約120の店舗やホテル、巨大ショッピングセンターのウイングベイ小樽、高層マンションが並ぶ。
2013年8月に、まず小樽病院が移転。ここにリハビリ施設や健診プラザ、発達支援事業所などを併設したウエルネスタウンの創設を進めていく計画を構想する。
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