「AIの存在におびえる人」は自分の価値を再考せよ 「人に必要とされないと嫌」思考がもたらす問題

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つまり、AIによって知性がまんべんなく行き渡っても、それを利用する人間は少ない。オープンAI※1の人たちは「これで人類に知性を配り終えたから、格差は解消されるぜ」と真面目に考えている可能性があるけど、配ればみんな知性が高まるかというと、たぶんそんなことはない。

※1 オープンAI AIの開発を行っている米国の企業。対話型生成AI「チャットGPT」はその代表作。サム・アルトマン、イーロン・マスクらによって、2015年に非営利法人として設立された。2018年にはイーロン・マスクが役員を辞任。2019年には営利部門の「OpenAI LP」を設立した。

暦本:AIは人間の能力を拡張しますが、使うかどうかしだいで差は広がりますよね。ポンコツの車しかなければみんな平等ですけど、全員がポルシェを持っていたら、その中でドライビングテクニックの差が生じるじゃないですか。みんな昔よりも速く走れるようになるけど、差も大きくなっていく。

いまよりタチの悪い格差が生まれる

落合:いまの格差より、もっとタチの悪い格差になるかもしれません。

暦本:そう考えると、知能の分布がベルカーブを描くというのも、じつはまやかしなのかもしれない。何もテクノロジーを使わない生身の人間なら、身長と同じように知能も正規分布するはずだけど、そこにテクノロジーが関わると現実には格差が生じる。実際、収入は正規分布せず、べき分布※2になりますからね。

※2 べき分布 身長、体重、学業成績といった、自然界の現象や人間の行動などの多くは、分布グラフが平均値を中心として左右対称のベルカーブを描く。これを「正規分布」という。しかし、それとはまったく異なり、べき乗則にしたがう(左端がピークで右に行くほど減っていく)分布となる現象も少なくない。19世紀終盤に「80:20の法則」で知られるイタリアのヴィルフレド・パレートが収入分布の研究を通して発見したその分布パターンを「べき分布」という。地震の大きさと頻度、ネットワークのリンク数なども、べき分布することが知られている。

落合:収入の少ない人が大勢いて、収入が多いほど人数が減る。グラフにすると、左端がピークで、右下がりのロングテールになりますね。

暦本:生身のIQは正規分布するにもかかわらず、そのパフォーマンスの結果としての収入は、べき分布。だから、すでにそこには格差があるんでしょうね。農業だけの時代ならそうはならないけど、資本やテクノロジーが介在する社会では、差が極端に積み上がってしまう。これからは、AIとうまくつきあえるかどうかで、ますます差は広がるような気がします。

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