さあ、日本のコーポレートガバナンスが悪い理由がわかったであろうか?
それは、ろくな株主がいない、ということなのである。20世紀までは、それは「株式持ち合いの弊害」ということで、部分的に指摘されてきた。つまり、株主は、株主の権利が十分に保障されているにもかかわらず、その権利を行使しないことが正しい、とされてきたことである。
私も、21世紀初頭に、いろんな会社の株主総会に出席し、出席するからにはつねに質問をしてきたところ、総会屋対策ならぬ「オバタ対策」をする会社まで現れた。物言う株主、という言葉に象徴されているように、意見を言う株主は、普通でない、ろくでもない、とされてきたのである。
アクティビストはいいとこどりをしているだけ?
この悪い伝統により「株主は株主総会で言うべきでない」というだけでなく、「ガバナンスそのものを履行しない、してはいけない」という風潮ができあがってしまった。これは、日本的な面もある。日本人、日本社会は、実は非常に個人主義で、よそ様にとやかく言われるのが、とにかく嫌いであり、言うやつは嫌なやつなのである。
そういう風土もあって、企業は株式の持ち合いをし、お互いを守りあった。その悪い伝統が、21世紀になっても続き、株主が株主として力を発揮しなかったのである。だから、アクティビストに絡まれるまでは、配当もせずにため込んでいたということもある。
しかし、ため込んだものを、今、アクティビストに払ってしまうのもおかしな話だ。まあ、過去の株主の怠慢のツケをアクティビストがいいとこどりをしているのである。
昨今のPBR(株価純資産倍率)1倍割れも、一方的に、日本企業の経営が悪いことになっている。こともあろうに、ほぼ政府のような役割を期待されている東京証券取引所までもが、アクティビストの手先のように「PBR改善運動」を展開して、ファンドのリターン上昇に貢献している。
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