Z世代の「不安型離職」は本当に増えているのか 「不満はないが不安」で若者が辞める会社の結末
典型例を考えよう。イマドキの職場は優しい。叱らない。遅刻してもミスしても、そうかそうか、と言って上司は許してくれる。しかし、そこで若手社員は考える。こんな「ゆるい」職場じゃ、自分は成長できない。もっと成長できる場がほしい。
だって、こんな職場じゃ、「ヨソ(他社、他部署)では通用しない」。ゆるい職場環境ゆえに成長への不安が喚起され、ヨソで通用しないと考えるようになる。これを「ヨソ通」問題と呼ぼう。
本当に不安型離職が起きているのであれば、会社にとってはなかなか難題である。イマドキの若者は叱ったら萎縮してやる気をなくすよ、って聞いていたから叱らないように気をつけていたのに、叱らないなら叱らないで、ヨソ通問題で不安を感じてしまうというのだ。どうすりゃええねん、という話である。
不安型離職は「増えている」のか?
不安からくるヨソ通問題に真正面から答える前に、2つほど考えておきたいことがある。まず、この記事内でも誤読が起きかねないのは、不安型離職なるものが起きているとして、それが「増えているのか」という点である。
ここでクイズを出したい。大卒の早期離職率(新卒入社後3年以内に離職する割合)、をご存じだろうか。要は、大卒の新入社員が3年以内に辞める割合、である。答えは「ほぼ3割」だ。ちなみに高卒はもうちょっと高くて、4割前後くらい。
では次の問題。早期離職率は、10~20年の間にどう変化しているだろうか。雇用の流動性の高まりとか、不安型離職といった情報を加味すると、「増えている」と思う人が多いのではないだろうか。
答えは「変わっていない」だ。厚生労働省によると、昭和62年からのざっと30年間で、最小で23.7%、最大で36.6%。「1.5倍」みたいな言い方はできるものの、まあ、ほぼ変わっていない。特筆すべきは、2010年から2020年の11年間は、31.0%から32.8%と、抜群の安定感で推移している。
「コロナ禍元年」の2020年も32.3%で、まだ2年ぶんしかデータのない2021年は2年目までで24.5%。単純計算すると3年目で36.8%くらいなのでここ10年にない高さではあるものの、まあ、たいして変わっていない。コロナ禍並の社会危機をもってしても、そこまで変化がない不思議な指標である。
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