Z世代の「不安型離職」は本当に増えているのか 「不満はないが不安」で若者が辞める会社の結末

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年の差は「怖い」のだ。というより、不安なのだ。いわゆるハラスメントにならないかとか、変なこと・嫌なことを言っていないだろうかとか、本当に自分を受容して、前向きに部活や仕事をしてくれるだろうかとか、マジメな人ほど不安を抱えるようになる。下心とかマウントとりたいとか、そんな気持ちは一切なくて、だからこそ迷い、不安に襲われる。

若手社員が不安だって? こっちだって不安だよ、と管理職も言いたいことだろう。

ミイラ取りがミイラになる未来

Z世代だけが不安型離職をする(らしい)から、Z世代の性質を究明して、対策を練っていこう。新入社員はエイリアンで、自分たちにとって理解不能なことをするに違いなくて、怖い。そう思った瞬間、相互理解からは遠ざかっていく。色々違いはあるだろうとはいえ、雑に言えば同じ人間なわけだから、共通項もたくさんあるはずなのに。

「若手社員の正体」を探ろうとするのは、まだいい。それが多少偏見や誤解を含むものであっても、まあ理解なんてそんなものだ(誤解なくして理解なし)。しかし決定的に危険なのは、若者「だけ」がそうであって、自分たちはまったく関係ないとか、安全圏だと過信してしまうことだ。

若者の困った性質をハックして誰かに対応を命じておけばどうにかなるのだと、「若者をそうさせているもの」を完全にコントロールできるのだと思ってしまうのは、とても危険である。

改めて、Z世代を部下にもつ上司たちに、こんな声掛けをして、どうなるだろうか。

「若手社員は不安らしいから、きみ、なんとかしておきなさい」

「不安型離職が増えてるらしい。早急に1on1とかでケアしておいて」

「会社としてはできることはやっている。離職が起きたら君のせいだぞ」

最悪のオチは、こんな話になることだろう。

「不安型離職」の記事を読んだお偉いさん、びっくりする。なんだ、Z世代ってこんなことになってんのか。まったく、近頃の若いもんは。困ったなあと思いつつ、部下の中間管理職を呼び出して、キミ、なんとかしておいてくれよ、と伝える。

まあ、今までも忠実に仕事をこなしてきたし、コイツならなんとかしてくれるだろう。雑な信頼を寄せて命令した、数か月後。辞表を持ってきたのは、なんと管理職の方だった。

「すみません、今の仕事に不安があって…」

これはただの創作だし、笑い話のようなものかもしれない。ただ、Z世代「だけ」が何か特別な性質をもっていて、だから誰か――だいたいは管理職――がどうにかすればよい、といった考え方をもつことは、会社組織として、危険な発想だと言っておきたい。

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舟津 昌平 経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師

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ふなつ しょうへい / Shohei Funatsu

1989年奈良県生まれ。2012年京都大学法学部卒業、14年京都大学大学院経営管理教育部修了、19年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。京都大学大学院経済学研究科特定助教、京都産業大学経営学部准教授などを経て、23年10月より現職。著書に『制度複雑性のマネジメント』(白桃書房、2023年度日本ベンチャー学会清成忠男賞書籍部門受賞)、『組織変革論』(中央経済社)などがある。

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