就職活動には、エントリーシートの作成や作文課題など、「文章を書く」場面がたくさんあります。「一応、書き方は勉強したけど、これで選考を通るだろうか」と不安になったり、「採用担当者の目に留まるような光る文章が書けたら」などと悩んだりする人も多いのではないでしょうか。そんなふうに、「書くこと」にちょっと自信がない人は、ぜひ、内田樹氏の『街場の文体論』(ミシマ社)を読んでみて下さい。本書は、2010年10月から約半年間にわたって行われた神戸女学院大学での講義「クリエイティブ・ライティング」を基に書かれた1冊です。
テーマは、ズバリ「届く言葉」の届け方
14講にわたってさまざまな話題を論じながら、この「届く言葉」や「生成的な言葉」とは何なのか、といったことに迫っています。自己PRや志望動機を企業にしっかりとお伝えしたいと考える就活生のみなさんにとって、非常に重要度の高いテーマではないでしょうか。
本書は、いきなり1講で次のように結論を明らかにしています。
「僕は『書く』ということの本質は『読み手に対する敬意』に帰着するという結論に達しました。それは実践的にいうと、『情理を尽くして語る』ということになります」。
敬意とは、「読み手との間に遠い距離がある」という感覚から生まれるものだといいます。たとえば、皆さんも、言葉が通じない人にどうしても伝えたいことがあった場合には、必死になってさまざまな説明を試み、身振り手振りで伝えようとするはずです。そうした、「情理を尽くして語る」態度が敬意の表現なのだと、著者は説明しています。
つまり、「届く言葉」には、発信者の「どうしても届かせたい」という切迫や必死さがあるということ。これが「届く言葉」と「届かない言葉」のただひとつの違いだといいます。どれほど非論理的であったり、知らない言葉がたくさん出てきたりしても、「届く言葉」は届く。逆に、どれほど語義明瞭で、文法的にも正しくつづられていても、「届かない言葉」は届かない。必死さが言葉を駆動し、思いがけない射程まで届かせるのです。
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