広大な自社農場で栽培したジャガイモやエンドウ、大麦を使ってジン、ウォッカ、ウイスキーを製造しているこの蒸溜所では、発電容量1メガワットの風車1基、電解槽、水素貯蔵タンク、水素ボイラーからなるグリーン水素エネルギーシステムを建設中だ。
水素の生成に必要な水は、屋根から集めた雨水を利用するという。フル稼働すれば、アルコール1リットルの製造につき約4キログラムの二酸化炭素(CO₂)が削減されるという。
「このシステムが実用化すれば、蒸溜所の脱炭素化は一気に加速するでしょう」と、取材に応じた創業者のイアン・スターリング氏は説明する。
ほかにも、水素による脱炭素プロジェクトが進められている蒸溜所には、ピート香の効いたウイスキーで名高いアイラ島のブルックラディ蒸溜所(1881年創業)や、ビームサントリー傘下のアードモア蒸溜所(1898年創業)、グレンギリー蒸溜所(1797年創業)などが挙げられる。
いずれも長い歴史を誇る蒸溜所だが、伝統にあぐらをかくことなく、未来を見据えた取り組みを積極的に推し進めているのが印象的だ。
シーバスリーガルやバランタインも
注目されているもう1つの脱炭素ソリューションは、蒸溜過程で生じる熱を回収・再利用することで省エネとCO₂排出量の大幅な削減を実現する廃熱回収システムだ。
シーバスリーガルやバランタインなどの銘柄で知られ、スコットランドに12カ所の蒸溜所を抱える大手メーカーのシーバス・ブラザーズ社(仏ペルノ・リカール社傘下)は、自己蒸気機械圧縮と熱蒸気再圧縮技術を組み合わせた熱回収システムを導入している。
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