週刊東洋経済 最新号を読む(5/23号)
東洋経済オンラインとは
ライフ #台所からのぞいた社会

氷の国なのに…アイスランドが「トマト大国」な訳 農業を支える火山大国ならではの資源活用

9分で読める
2/5 PAGES
3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

アイスランドで地熱利用が進んでいる背景の1つには、その地理的特異性がある。地殻プレートの境界に位置するという点では日本と共通だ。しかし、日本はプレートが沈み込む境界に位置するのに対し、アイスランドはプレートが生まれる境界に位置する。

プレートが生まれる境界は通常、海底に位置し海嶺と呼ばれるが、アイスランドはそれが地上に出ている唯一の土地だ。マグマ溜まりが地上付近の浅いところにあるので、プレートがもぐりこんだ日本のように深くまで掘削することなく地熱が利用できる。

アイスランドは、この図で「プレートが生まれる場所」となっている東太平洋海嶺と同じような条件にある(出所:東京大学地震研究所)

地熱を利用してパンを蒸したり、料理をしたりしようという発想も、地表近くに利用できる熱源があるという環境あってのことだろう。さらに、石油も石炭もとれず、木すらも乏しかったという制約条件も背中を押しただろう。

個人で地熱を利用するという発想

日本は、地熱埋蔵量でいうと世界3位の量を誇り、アイスランドの4倍ほどもあるが、利用はあまり進んでいない。マグマ溜まりが深くにあることに加えて地盤が硬いため、掘削にコストがかかるという自然科学的条件もあるようだが、その他には地熱発電適地が自然公園に多いこと、温泉事業者の反対があること、既存電力事業者の抵抗があること、などの社会的要因も挙げられている。さらに日本の人口密度はアイスランドの約110倍なので、用地確保が難しいという点もあるだろう。

自然科学的条件も社会環境も異なる両国を単純比較して、日本がどうこう言えるものでもない。ここで私が興味惹かれたのは、発電のような大スケールの話よりも、パンを蒸したり共同台所を作ったりといった、個人レベルでの地熱利用だ。

高い蒸気温度の熱源があったから使えたわけだけれど、身のまわりの資源を利用してなんとか食物を生み出そうという人間の知恵は、いつの時代のどこの土地の人をみても敬服する。そういう身体レベルの資源利用から、社会スケールのサステイナブルな資源活用の発想も出てくるのではないか。

冬のアイスランドは確かに旅行のベストシーズンではなかったが、このような食の知恵に出会えたから、ほくほくして帰ってきた。

過去の連載はこちら

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象