日本の選択「年収の壁の廃止」か「移民に参政権」か 「扶養控除」をなくし「子ども支援」を徹底すべき

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この論文では、いわゆる「年収の壁」が取り上げられており、これらの存在が女性自ら非正規雇用を選択し、労働供給を制約する原因とされています。

年収の壁は、以下のようにいくつも存在します。

(1) 100万円の壁
(2) 103万円の壁
(3) 106万円の壁
(4) 130万円の壁
(5) 150万円の壁

100万円前後で住民税が課税され始め、さらに103万円以上になると今度は所得税が課税され始めます。106万円以上になると、社会保険の加入が必要となる勤務先もあります。130万円となると、社会保険の加入が必要になります(他の条件もあり)。150万円は満額の配偶者特別控除を受けられる年収の上限です。

年収の壁は「人口増加時代」の遺物

もとはどんな意図で導入されたかはともかく、これらの壁の存在によって、女性たちはこれらの壁を超えないように労働時間を調整しています。つまり、今の税制は女性が供給する労働時間を制限する結果をもたらしているのです。

人口が増加していた時代に設けられたこの制度は、そもそもはそんな意図はなかったのかもしれませんが、人口が減少し続けている今、そのひずみが際立ってきてしまっているのです。

日本の女性は学力も能力も高いのにもかかわらず、税制の影響で労働時間が制限されてしまうため、正社員ではなくアルバイトやパートといった非正規雇用を選んでしまいがちになります。その結果、生産性の高い仕事に就くのが難しくなってしまっているのです。

最低賃金引き上げの議論では、「年収の壁があるため、最低賃金を引き上げると、女性の労働時間がいっそう短くなり、人手不足が悪化する」という声も上がっています。

政府は年収の壁の「金額」の引き上げなども検討しているようですが、この考えはそもそも間違っています。ここまで社会保障の負担が劇的に重くなり、国民負担率を重くしているので、労働供給と賃金に悪影響を与える税のゆがみは、小手先の修正では解決できません。制度自体を完全に廃止するべきです。

北尾教授らの論文が示すように、配偶者の扶養控除の金額を上げるのではなくて、完全になくすべきです。そして、女性たちに働きたいだけ働いてもらい、稼ぎたいだけ稼いでもらって、所得税などを普通に支払ってもらえばいいのです。

現行の制度では、女性の場合、結婚することで所得を制限されてしまうことになります。結婚というのはそもそもパートナーと幸せになるための行為なのにもかかわらず、今の制度では「Marriage penalty」とでも呼ぶべき罰金が科されることになってしまっています。

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