日本の選択「年収の壁の廃止」か「移民に参政権」か 「扶養控除」をなくし「子ども支援」を徹底すべき

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日本では、今後数十年で3000万人の労働力が市場から消滅する見込みですので、その分を移民の受け入れで補おうとしても、年間100万人単位ではまったく足りません。

フルタイムで働く日本人が減れば減るほど、さらなる移民受け入れ増加を希望する声が高まることも予想されます。

移民が増えれば、その声も大きくなっていく

もちろん、移民が増えるほど、彼らからも医療制度の充実を要求する声が強まるでしょう。彼らも日本に居を構えて、働き、税金を支払うので、このような要求が上がるのは当然の流れです。そうなれば、彼らからも年金の支給を要求する声が出てくるのは容易に想像されます。

さらに移民が増えると、自治体によっては外国人が人口の過半数を占めるところも現れるでしょう。

日本は民主主義の国家なので、たとえもともとは移民であっても、納税者として長く住んでいれば行政に対する影響力は強くなります。最終的には、少なくとも地方の参政権を認めざるをえなくなる可能性は否定できません。

現時点では、そこまで考えている人は少ないと思いますが、論理的に考えれば容易に想像できるシナリオです。

「そんなことは絶対に受け入れられない」と彼らの要求に対して拒否感を覚える人もいるでしょうが、高齢化社会の負担を軽減するために、移民を積極的に受け入れる一方で、参政権は認めないという「ご都合主義」は通用しません。

社会保障の負担が大きいため、移民の受け入れでその負担を軽くするという願望が強ければ強いほど、受け入れる移民の数を増やさなくてなりません。結果として、彼らの参政権を認めないわけにはいかなくなります。

逆に言うと、彼らの要求を認めなければ、移民の増加も制限されるでしょうから、社会保障の負担を彼らに負わせるという都合のいい願望は絵に描いた餅に終わります。

結局、論理的に考えると、年収の壁や第3号被保険者制度の廃止をしなければ、大量の移民を受け入れざるをえず、かつ、彼らの参政権を認めざるをえなくなります。

配偶者の扶養控除を廃止しないことで、生産性が上がらず、社会保障制度の持続性に悪影響を与え、結果として大量の低賃金の移民を受け入れざるをえなくなる……愚策以外の何物でありません。

1日も早く、扶養控除も第3号被保険制度も廃止しなくてはならないのは、火を見るより明らかなのです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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