「乳房」を手放した女性が直面、それぞれの事情 傷跡をカバーできる「ヨガウェア」を開発・販売

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鏡を前に突きつけられると、“女性の胸はなめらかで、ふたつの隆起があってこそ”と、たじろいでしまう人もいる。利香子さんは自身の経験をふまえて、そんな女性たちの助けになりたいと思った。そこで、たまたま自分が作ったワンショルダーのウェアを改良してみたら、ヨガをしてもまったく傷跡が見えなくなった。これならば、胸が気になる人にも楽しく着てもらえるし、アクティブに過ごしてもらえる。

「女性が人目を気にせず過ごせたらいいなと思って、このウェアは定番で作っているんです。日本の温泉にも、傷などが気になる方のための“湯浴み着”があると聞いて、“じゃあ、温泉も大丈夫だ”と思いました。今、乳がんの治療をしていて“運動や温泉が楽しめなくなっちゃうな”と悩んでいる方にも“こういうものがあるなら安心だ”と思っていただけたら、嬉しいんです」

失乳という経験を凜と涼やかに鎮めて、利香子さんは前を向く。

「乳房を取ってから5年くらい経ちますが、当初は、まったく泣かなかったんですよ。でも、少し前に自分の内面と向き合う呼吸法のワークショップに参加したとき、急に私の胸のことを思い出して。“本当は、切りたくなかった!”って強く思ったんです。そのとき、初めて涙が出ました。ヨガや瞑想に親しんで、“よいほうに考えよう、執着しないようにしよう”と言い聞かせてきたけれど、根底には“切りたくなかったよね”という思いが息づいていたんです。泣いて、ようやくその気持ちを吐き出せてよかった。弔って改めて、見えないけれど今もそこにいる私の胸を、とても愛しく思いました」

利香子さんのように、わが胸を大切に思うがゆえ、再建を見送った人もいる。

一方、パートナーの思いに背中を押されて、再建を選んだ人もいる。

思い込みと忙しさで育ててしまった乳がん

藤代美波さん(仮名・48歳)は、夫婦でクリーニング店を営む1男1女の母親だ。

両親から引き継いだ家業を切り盛りし、その丁寧な仕事ぶりは町でも評判だった。

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