84歳で「初のネイルサロン」へ行った女性の心情 「気がつけば老婆の手」それでも美しくなりたい

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84歳にして初めてネイルサロンを訪れた佐賀美智子さん(筆者撮影)
外見によって人の価値をはかるべきではない――。「ルッキズム」とは容姿の美醜による差別の意味でしばしば使われるが、それでも自分の基準で「美しくありたい」と思う人は多くいる。自らの外見を変えることによって、その人たちが手にしたいものは何なのか。「美しくありたい」の背景にあるものを追う。

「娘に連れられて、初めてネイルサロンに行ってきたんです」

横浜駅に近接するデパートの中階。待ち合わせのカフェに現れた佐賀美智子さん(仮名)は、小柄で上品な印象の女性だった。ゆったりしたブルーのニットが、穏やかな雰囲気の彼女によく似合っている。

「ネイルサロンなんて、自分には関係のないところだと思っていたんですけどね」

恥ずかしげに見せてくれた指先には、花びらのようなピンクの爪が輝いていた。

ひたすら家族に尽くしてきた

美智子さんは21歳で結婚して専業主婦になり、84歳になるが、50年以上をひたすら家族に尽くしてきた。子どもたちを育て上げ、義母を介護して看取り、長く入院していた夫は闘病の末7年前に亡くなったという。今は老人会の手伝いをしたり、ボランティアで学校や施設に出向き、子どもたちに読み聞かせをしている。

この連載は初回です

「手なんて気にしていたら家事も病人の世話もできませんから。炊事、洗濯、時には庭仕事や日曜大工まで、何十年も手袋もせずこなしてきました。自分にかける時間もお金もないし、手をまじまじと見ることもなかったんですが……。義母と夫を送り、少し心に余裕ができて、今までフタをしてきた気持ちに気づいたんです」

「ふと気づけば老婆の手。独身のKさんの指は美しい。尊敬するNさんの手はふっくらしているけど私の手に似ている。でも、おばあちゃんの梅干し、母さんの糠味噌漬け、両方ともこの私の手がその作り方を踏襲してきた。喜ぶ人がいたから。でも今日ハッキリ思った。やっぱり美しい手にしたい!」(美智子さんが娘さんに送ったLINE)

母親の切実な声に驚いた娘さんは、急いでネイルサロンを予約し、美智子さんに付き添ってくれたのだという。

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