「みんなの末っ子」として愛されてきた
春の雨がアスファルトを叩く渋谷センター街。
煌々と輝くカラオケボックスの一室に、黒のセットアップを纏った金髪の女性が駆け込んできた。葉月真波さん(仮名、25歳)。約束に遅れたことを詫びたはずみに、ショートヘアから雨の雫がきらっと跳ねる。その顔に“整形美人”のイメージはない。彼女はネバーランドに住むあの少年のような、不思議な雰囲気を漂わせていた。
「私、小学生くらいまでは自分のことをめっちゃ可愛いと思ってたんですよ。“可愛い、可愛い”って言われて育ったので。顔面に関しての自己肯定感は、かなり高かったと思います。それが、中高生になって容姿のことを考えはじめて、まわりのモテる子と比べると“なんか違う”と思うようになりました。さんざん言われてきた“可愛い”も言われなくなったし、きわめつけは進学のために上京したとき。東京にはあまりにも可愛い子が多くて、衝撃を受けました」
真波さんは高校卒業までのどかな地方都市で暮らしていた。近所づきあいでは最年少だったので、“みんなの末っ子”としてたっぷり愛されてきたという。自尊心も順風満帆に育てられた。ところが、おだやかだった海は“都会の美女”という嵐に見舞われる。揺るぎなく“可愛い”を指していたコンパスの針が、ぐるぐると回りはじめた。
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