「乳房」を手放した女性が直面、それぞれの事情 傷跡をカバーできる「ヨガウェア」を開発・販売

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パートナーをもつ人にとって、わが身は“自分のもの”であると同時に、“相手のためのもの”としての側面ももつ。容姿に変化を伴う手術に挑む妻に、夫は“これを美容のチャンスととらえてみては?”と提案し、術後も続く彼女の未来を慮った。そんな夫の気持ちを汲んで、美波さんは乳房を“作り直す”ことに決めた。夫のためにも、できれば元のような胸になりたい。

“先っぽ、どうします?”

ところが、さらに強い思いがその決意に“待った”をかけた。

「手術の1週間ほど前、担当の先生に“先っぽ、どうします?”って訊かれたんです。先っぽって……ああ、乳首のことか。そうか、なくなっちゃうのかなって。

“あなたの場合、がんがちょうど乳頭の裏側にあるんです。取ってしまえるなら取ったほうが安心ですが、そうすると先端はなくなってしまいます。取るか取らないか、どちらでも構わないので、あなたご自身が決めていいですよ”って言われました。

でも、見た目を気にして乳首を残して、悪い細胞まで残ってまた増えたりしたら嫌なので、すぐに“取ってください”と言いました」

そのとき美波さんの脳裏に浮かんだのは、愛してやまない子どもたちの笑顔だった。

当時、娘は19歳で翌年成人式を、息子は15歳で高校入学を控えていた。

「なんとしても娘の成人式と息子の入学式を見たい。そのためにできることは全部やる。生き延びられるなら、乳首なんていらない!」

そう思って、医師に訴えた。

「乳首はあきらめるとしても、取ったあとはどうなるんだろう?と思って訊くと、“先端には、お腹の皮を着けます。改めて手術すればもう少し乳首らしく作り直すこともできますし、人工の乳頭を着けることもできますよ”って、乳頭のサンプルをたくさん見せていただきました」

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