恩田陸作品史上「もっとも美しくヤバい天才」爆誕 萌え保証!一人の天才少年をめぐる「春」の物語

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実は、恩田は圧倒的なインプットをする作家としても知られる。それは読書に限らず、映画などの視聴や観劇、あらゆる“本物”を貪欲に摂取していくという方法論、いや性分のようだ。「時間が足りないですね。本は寝る前は必ず1冊読むようにしています。2時間くらいで1冊読めるので、そのまま寝落ち。本や映画、準備している小説によってはオーケストラやバレエも、たくさん摂取しないといけないのですごく忙しいんです。だから、テレビドラマを見始めてしまったら終わりだと思って、それはなるべく避けてる(笑)」。

今作『spring』執筆に当たっても、かなりの量のバレエ公演や映像を見た。「2014年に、編集者さんと次はバレエを書きましょうという話になって、クラシックバレエの全幕ものを観始めました。それまでミュージカルやコンテンポラリーバレエは好きでよく観ていましたが、まだ書けないと言っているうちに、結果的に6年たっぷり観て」。

「書く」と「考える」を同時進行

「ある程度観て、蓄積しないと書けないんですよね。インプットしないと書けない部分もあるし、寝かせる必要もある。舞台を観ると、その場その場の印象は反芻するんです。かといって、反芻して満足しちゃいました、では書けなくなるし。執筆に取り掛かったのも、書くべき作品が“見えた”というよりは、さすがにそろそろ書かねばやばいなと、見切り発車です。書きながら考えていくというのを同時に並行してやっていました」

その膨大なインプット量によるものなのだろう、作品中には、恩田の想像によるコンテンポラリーバレエ作品がいくつも出てくる。「この曲だったらこういう踊りかな、という妄想です(笑)。これまで聞いてきた音楽から、これだったら踊れそうだな、なんて、作品の演出を考えるのは楽しかったですね」。

いかに好きだからとはいえ、畑違いのダンス作品を妄想できるまでに観て学習する恩田の知的好奇心と、得た知識を原料に架空のダンサーによる架空の舞台を生成する妄想力と。恩田陸という作家がこの時代の優れた人気エンタメ作家の座にあるわけだ……と舌を巻く。

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