アドラー心理学をわかりやすく説いたベストセラー『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健著/ダイヤモンド社)をご存じの方も多いことでしょう。
このタイトルの意味を、うんとわかりやすくかみ砕いて言うと「無理に好かれようとは思うな」ということです。
アドラー心理学は「他者に期待するな」「他者に影響を与えられると思うな」、つまり「自分が影響を与えられるのは自分だけであり、だからこそ自分がいかに生きるかが重要だ」と教えています。
この教えを心に留めて、話を元に戻しましょう。
利用されても、燃え尽きずにすむコツ
いい人は、自己中心的な人たちに対しても親切に行動する傾向があります。
また、他者が自分の善意を理解し、同じように行動する、いつかは報いてくれることを期待します。
しかし、これでは期待の落とし穴にハマってしまいます。「善意が報われるとは限らない」という事実を前に、いい人は疲弊しながら、いっそう尽くしてしまうのです。
この問題への対策は、「他者に対する期待を捨てる」ことです。
私たちは自分のコントロールはできますが、他者をコントロールすることはできません。
だから、他者からのお返しを重視する代わりに、自分の行動が自分自身の価値観と一致しているかどうかを重視すべきです。
そうすれば善意の行動がたとえ他者に利用されても、失望することなく、自分自身の信念と一致していることに満足できます。
燃え尽きずにすむのです。
アドラーも次のような主旨のことをよく説いています。
「その人を水辺に連れていくことはできる、しかし水を飲んでくれるかどうかは、その人次第である」
これは「善意が報われない」という意味ではありません。自分の善意を他者の反応から独立させ、自分の価値観に基づいて行動することで、自分自身の幸せと他者の立場を守ることができるのです。
自分の価値観に基づいて行動し、過剰な期待を放棄することで、精神的な健康を保つこと。
これこそアドラー心理学が私たちに教えてくれている、善意の限界とその管理法です。