「知ったかぶりして間違えた」リーダーのその後 部下に命令するのをやめた組織で何が起きたか

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私がそれまでに受けたリーダーシップ研修は、リーダーの意思決定のやり方と、決めたことをチームに実行させる方法を教えるものばかりだった。

だが、そうして学んだ解決策は、サンタフェで間違った命令を下したときには何の役にも立たなかった。

それもそのはずだ。問題は、間違った命令を下したことにあるのではなく、そもそも私が命令を下したことにあるのだから。

たった1年で生じた劇的な変化

みなの前で私の間違いが露呈したその日、私はサンタフェの士官たちとこんな約束を交わした。私は今後、一切命令を与えない。その代わり、われわれの目的は何で、何を成し遂げようとしているかを伝えると。

士官たちは、今後は艦長からの指示を待たないことに同意した。

今後は指示を待たず、彼らのほうから、目的をどのように成し遂げるつもりなのかを私に伝えるようにする。この変更により、使う言葉が少しばかり変わることになる。

士官たちは、「艦長、○○の許可をお願いしたいのですが」ではなく、「艦長、これから○○をします」と言うようになる。

そして、私たちは握手を交わし、それぞれの職務に戻った。

それから12カ月が過ぎ、サンタフェはある記録を樹立した。33名の優秀な水兵が、翌年の再乗艦願にひとり残らず署名して海軍に残ったのだ。また、海軍に要請されるあらゆる任務において、優秀な成績を修めた。

そればかりか、潜水艦操作の視察検査を受けたときには、歴代最高得点を叩き出した。解雇者はひとりも出していない。にもかかわらず、サンタフェのパフォーマンスと士気は、たった1年で、どちらも最低から最高に跳ね上がったのだ。

そうなったのは、士官や水兵に対する上からのプレッシャーを強くしたからではない。逆に私が一歩下がり、彼らが私に歩み寄るようにしたためだ。その結果、1人のリーダーと134人の部下は、自ら行動し考える135人のリーダーとなった。

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