ヒトの「不死」細胞はすでに存在している驚愕事実 ただし、皆が思い描く不老不死の実現は難しい

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しかし、始原生殖細胞にとって利点のない「始原生殖細胞以外の領域」の寿命延長は、その生物種の生存競争においてマイナスに働き、絶滅につながってきたと思われます。

今のそれぞれの生物種の持つ平均的な寿命は、そうした進化の歴史の中で最もバランスのよい形として実現されてきたものと言えるでしょう。生物である限り、やはり死は受け入れるしかないものだと思います。

「食事」「睡眠」「ストレス」の管理が重要

近年、レスベラトロール、コエンザイムQ10、オメガ3脂肪酸、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)、さらにアストラガルス(オウギ)という植物に含まれる成分などに、老化を遅らせ、健康寿命を延ばす効果があるとして、サプリメントという形で売り出されています。

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確かに、それらはこれまでに実験的に報告された寿命などに関わる分子機構に影響を与える要素はあると思います。

ただし、先に述べましたように、老化は様々な要素が複合的に作用しながら進むものです。

特定の分子レベルのシナリオを強制的に変更したからといって、生物個体全体の老化をストップ/スローダウンさせることまでが実現するとは思えません。

また、特定の化学物質を過剰に摂取した場合の安全性についても、不安視される要素はあります。

やはり、適度なカロリー量の栄養バランスのとれた食事、良質かつ十分な睡眠、そしてストレスを少なくすることなどが、普段の生活の中で、生物個体の本体のメンテナンスのために最も重視すべき選択肢ではないでしょうか。

黒田 裕樹 慶應義塾大学 環境情報学部 教授

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くろだ ひろき / Hiroki Kuroda

1973年京都生まれ。名古屋大学理学部分子生物学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科修了(博士)。UCLAにてポスドク、静岡大学教育学部理科教育講座にて准教授を務めたのち、慶應義塾大学環境情報学部准教授を経て、現在同大学教授。主な研究テーマは発生生物学。アフリカツメガエルなどを用いて脊椎動物の初期発生過程の形づくりにかかわる分子機構を解析している。その影響で、近辺の別分野の教員からはカエル屋とも呼ばれる。著書に『休み時間の分子生物学』。

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