ヒトの「不死」細胞はすでに存在している驚愕事実 ただし、皆が思い描く不老不死の実現は難しい

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もし、永遠の命の定義が「自分自身のゲノム配列を持つ細胞が永久に生き残れること」であったとすれば、それはすでに実現しています。例えば、HeLa細胞(※1)は、1951年に取り出されたヒトのがん細胞に由来しており、これまで何十年にもわたって世界中の研究室で繁殖し続けているからです。

しかし、不老不死への渇望は自分自身のゲノム配列を持つ細胞が永久に生き残るだけで満たされるものではありません。少なくとも自分自身が持つ精神世界が永遠に維持され、刺激を受け入れることができ(インプット)、それに対して適切な反応をすることができること(アウトプット)が含まれるでしょう。

つまり、脳を中心とした中枢神経系と、それに対するインプットとアウトプットが正常に機能している状況を永遠に維持する必要性があります。それを考えただけでも不老不死の実現は極めて困難であると言わざるをえません。

(※1)ヒーラ細胞と発音する。Henrietta Lacksという女性患者の子宮頸部腫瘍から採取された生検標本をもとに樹立された培養細胞株。ヒトにおいて初めて株化に成功した例となる。この細胞株を用いて、子宮頸がんの原因ウイルスが解明され、2008年のノーベル生理学・医学賞の対象となっている。翌2009年の同賞はテロメアに関する研究が対象になり、その研究の中でもHeLa細胞が活用されている。輝かしい功績を持つ細胞であるが、本人に知らされることなく採取・樹立された背景があり、個人情報の保護やインフォームド・コンセントの観点から、大きな問題に発展したこともある。

損傷が蓄積されていく神経細胞

時間とともに、私たちの細胞は適切に機能したり分裂したりする能力を失います。このプロセスは「セネセンス」(※2)と呼ばれます。それは脳細胞にも当てはまります。時間の経過とともに、紫外線、放射線、化学物質、通常の代謝プロセスで発生する活性酸素などから私たちのDNAは損傷を受けます。

(※2)細胞が一定の回数分裂すると、その細胞の分裂能力が失われ、増殖が停止する現象を指す。この状態の細胞は死んでいるわけではなく、一定の活動を続けている。セネセンスを経た細胞は、分泌物の変化や形態の変化など、様々な特徴を持つ。最終的には炎症反応の促進や組織の再生の妨げとなるなど、様々な負の影響を及ぼすようになる。

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