ヒトの「不死」細胞はすでに存在している驚愕事実 ただし、皆が思い描く不老不死の実現は難しい

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特に免疫系の総司令官的な働きをするヘルパーT細胞の成熟には「胸腺」という臓器が欠かせません。しかし、胸腺は思春期頃をピークにして、徐々に脂肪組織に置き換えられて萎縮していきます。

そのため、成人を過ぎてからは年々、免疫応答の質と量は劣化の道をたどります。これも、何らかの臓器・組織の疾患につながる要素となり、死を近づけるものになるでしょう。

生物である限り、受け入れるしかない老化と死

そもそも、なぜ老化と死があるのでしょうか。その大きな理由の一つは老化と死があることが生物種としての利点となることです。ここで「始原生殖細胞」という特別な細胞を意識することが重要になります。

始原生殖細胞とは、精子や卵になるために特別枠のような形で体の中にキープされる細胞のことです。精子と卵が受精してできた受精卵が何度かの分裂を繰り返した発生のごく初期の時点で始原生殖細胞はつくられます。

その後の体は「始原生殖細胞」と「始原生殖細胞以外の領域」に識別されると言えるでしょう。
私たちが、若さを保ちたい、死にたくない、と考えている精神世界は、物理的には「始原生殖細胞以外の領域」にあたります。

特定の生物種が存続していくためには、始原生殖細胞を介した次世代への遺伝子の受け渡しが必要であり、受け渡しを完了した「始原生殖細胞以外の領域」は、始原生殖細胞の観点からはいつしか邪魔な存在になります。

進化の歴史の中では、特定の生物種において、寿命が延びる傾向のある変異が生じたこともきっとあることでしょう。

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