健康ブームでも「野菜ジュース」が売れないナゼ 復活のカギは「わかりやすさ」と意識変容

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さらに取り組むのが、野菜を摂取することに対する啓蒙活動だ。野菜飲料の需要回復には商品を磨くことも重要だが、前提として、消費者が「野菜を摂りたい」という意識を持つことが必要となる。

厚生労働省によれば、同省が推奨する1日の野菜摂取目標量350グラムに対して、日本人の1人当たり平均野菜摂取量は約280グラムにとどまる。しかもこの目標は、直近の2019年調査までの10年で1度も達成されておらず、摂取量も横ばい程度が続く(厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」)。

一方、カゴメと伊藤園はともに「“自分には野菜が足りている”と思い込んでいる人が多い」との認識を持つ。そのため両社は、消費者の意識を変えるために試行錯誤する。

約30秒で推定野菜摂取量を表示

そこでカゴメが生み出したのが、野菜摂取量測定機「ベジチェック」だ。手のひらをセンサーに当てると皮膚に蓄積したカロテノイド量が測定され、約30秒でタブレット画面上に過去2~4週間の推定野菜摂取量が表示される。12段階で野菜摂取レベルが判定され、自分に野菜が足りているか否かが簡単にわかる仕組みだ。

カゴメが開発した野菜摂取量測定機「ベジチェック」(写真:カゴメ提供)

2019年のサービス開始以降、健康経営に力を入れる企業や小売店の青果売り場などへ設置を進め、2023年12月末時点のレンタル・リース件数は延べ1500件以上、ベジチェック累計回数は655万回以上に達した。

ベジチェックを設置した一部の小売店では、カゴメの野菜飲料(ペットボトル)の販売金額が前週比145%、スムージーは同222%になったという。「生活者の意識・行動変容をさまざまな手段で促している。野菜飲料の市場全体に良い影響を与えられれば」(カゴメ広報)。

伊藤園は、管理栄養士の資格を持つ社員による「野菜」や「野菜飲料」をテーマにしたセミナーや、野菜飲料を使った料理教室といった「野菜食育活動」を実施している。また、2022年から「野菜・果実マイスター社内検定」という社内資格制度を作り、社内外で情報発信の機会を増やしている。「こうした活動を通じて、日本人は野菜不足だということの訴求に改めて努めていきたい」(伊藤園広報)。

昨今は野菜汁や果汁などの原料の価格高騰が顕著で、カゴメや伊藤園は今年2月にも野菜飲料の再値上げを控える。これにより、短期的にはさらなる販売数量の落ち込みが懸念される。一方、1年間に1回でも野菜飲料を飲む人は2人に1人だといい(カゴメ調べ)、新規顧客獲得のポテンシャルはまだまだありそうだ。いかにわかりやすく栄養価値を伝え、野菜摂取への意識変容を起こせるかが、市場回復・拡大のためのカギとなる。

田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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