健康ブームでも「野菜ジュース」が売れないナゼ 復活のカギは「わかりやすさ」と意識変容

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これまで野菜飲料は、「なんとなく健康に良さそう」という理由で選ばれてきた面がある。一方、乳酸菌飲料には「免疫ケア」や「睡眠の質向上」「ストレスの緩和」など、消費者の目的や悩みに対して特定の機能をうたう機能性表示食品が多い。細分化された「わかりやすい」機能性が表示されている乳酸菌飲料に、野菜飲料の需要が奪われている現状がある。

カゴメのマーケティング本部で飲料企画部長を務める西村晋介氏は、乳酸菌飲料やタンパク飲料などの台頭で健康飲料に求められる価値が多様化し、「相対的に野菜飲料の印象が薄れてしまっている」と語る。

「わかりやすい野菜ジュース」は売れている

こうした状況に、メーカーはどう対処していくのか。

戦略の1つは、野菜飲料も「わかりやすく」することだ。

野菜飲料においても、機能性の表示が進んでいる。伊藤園が販売する「栄養強化型 1日分の野菜」。商品1本に1日に必要な野菜量350g分を使用しているだけでなく、食後の「中性脂肪」「血糖値」の上昇を抑え、高めの「血圧」を下げるという3つの機能性をうたう機能性表示食品だ。ダウントレンドが続く同社の野菜飲料の中で、機能性表示食品の売り上げは2023年度上半期で前年同期比18.6%増と大きく伸長した。

カゴメの西村晋介氏は「野菜飲料は情報発信の面で努力不足だった」と語る(撮影:尾形文繁)

同様に3つの機能性をうたうカゴメの「野菜一日これ一本 トリプルケア」も、売り上げは好調だという。

カゴメが販売する野菜飲料の中で好調なのが、トマトジュースだ。2023年1月から9月までの売り上げは、前年同期比で2桁以上増加したという。同社のトマトジュースの大半は機能性表示食品で、「善玉コレステロールを増やす」「高めの血圧を下げる」といった機能性を明示する。これらが50代を中心としたメタボ予防目的の中高年層に支持されているようだ。

積極的な情報発信も大きなポイントとなる。例えばトマトジュースに含まれるリコピンには強い抗酸化力があり、紫外線による肌の赤みや色素沈着などの皮膚ダメージを予防・軽減する効果が期待できる。こうした研究結果をホームページ上に数多く掲載し、商品の価値を根拠とともに訴求している。ここ数年は、リコピンが美容健康意識の高いインフルエンサーから注目を浴びたことで、20代、30代の購買層も増えている。

今後はにんじんに含まれるベータカロテンの価値訴求にも力を入れる考えだ。にんじんは多くの野菜飲料の原料として使われる。そこに含まれるベータカロテンには、肌の表面にシミとして現れる可能性のある「隠れジミ」の予防効果が期待できる。「野菜飲料は他飲料と比べ情報発信の面で努力不足だった。いかに具体的な価値を伝えていけるかが重要だ」(カゴメの西村氏)。

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