日本の「エリートたち」がもうエリートではない訳 イノベーションが生まれない環境を作ったのは

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しかも、日本では今後、若い世代の人数が減少していくことは確定している。今も新卒採用の現場で起きていることであるが、旧来型の雇用慣行の企業(どこに配属されるかもわからない)は学生に敬遠されるようになっており、内定者の目標数を下回ってしまうようになっている。

一方で、入社してすぐの若者がベンチャー的な企業に転職していくことが普通のことになってきた。特にデジタル人材やグローバル人材に関してはひっぱりだこの状態であり、高い給料で転職していってしまう。

このような人口環境の中で「中途採用者が活躍できない」旧来型の企業には、中途採用者が集まらないだけでなく、転職していく若者が後を絶たなくなっていく。

他方、「中途採用者が普通に活躍している」企業には、やる気のある若者が次々に入ってくる。そうした企業は、前例にとらわれることなく、社会課題や「困りごと」を解決しようとして、技術革新やビジネスモデルの革新を推し進めていくことであろう。

旧来型の日本企業が復活するのに必要なのは

では、旧来型の日本企業が復活することはないのだろうか。唯一残されたチャンスは、若者を抜擢することであり、中途採用者を幹部にスカウトしてくることである。しかもその大多数が女性であれば、なおのこと望ましい。外国人が多く含まれていれば、理想的である。

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さまざまな技術をため込んできた大企業には、社会課題の解決に使える技術が大量に眠っているはずであり、社外からスカウトされてきた幹部が見たら、まさに宝の山に見えるであろう。

若い世代が活躍することで、そうした宝の山が日の目を見ることも出てくるに違いない。何しろ世界は大きな社会課題にあふれているのであり、ビジネスチャンスはまだまだ広がっていくのである。

岸本 義之 武庫川女子大学経営学部 教授

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きしもと よしゆき / Yoshiyuki Kishimoto

東京大学経済学部卒業、アメリカ_ノースウェスタン大学ケロッグ校MBA、慶應義塾大学大学院経営管理研究科Ph.D.。外資系コンサルティング会社マッキンゼーのマネージャーおよびブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PwCコンサルティングStrategy&)のパートナーとして、金融・サービス・自動車・消費財・小売などの業界のマーケティング領域のコンサルティングに多く従事してきた。早稲田大学大学院経営管理研究科客員教授、エーザイ社外取締役などを経て現職。著書に『メディア・マーケティング進化論』『金融マーケティング戦略』など。

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