日本の「エリートたち」がもうエリートではない訳 イノベーションが生まれない環境を作ったのは

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逆に欧米人にはまったく想像もつかないのが「新卒中心主義」という慣例である。これは日本の大企業では空気のように当たり前のことなので、日本ではこれを問題だと思う人すらいない。「中途採用をしても結局すぐやめてしまうのだから意味がない」と考える人が多数派という大企業も多い。

そういう大企業ではイノベーションは起きよう筈もない。自分の会社以外のカルチャーを経験した人が皆無だとしたら、しかも、社員全員が忠実な前例踏襲主義者だとしたら、イノベーティブな発想をする人は出てこない。

多様性が失われていく過程

「出る杭は打たれる」という同調圧力を皆が感じているので、新しいこと(前例とは違うこと)を提案することに全員が躊躇する。若者の抜擢は起きないので、下積みをしている間に前例踏襲主義に染まっていく。長時間労働を美徳としてきたので、女性にとっては極端に働きにくい職場であり、管理職になる前に多くの女性が辞めていく。

中途採用の社員は、社内のインフォーマルな人脈に入ることができず、そのために活躍の機会も見いだせず、すぐに辞めてしまう。海外現地法人に外国人をスカウトしてきても、「責任と権限があいまいで、権限がないはずの本社がいろいろ邪魔をしてくる」ことに嫌気がさし、もっと条件の良い他社にすぐに転職していく。結果として、新卒入社の日本人高齢男性が実権を握り続け、前例踏襲カルチャーをより強固なものにしてきた。

日本の大企業からイノベーションが起きない理由は、相当根深いところにある。しかし、日本の将来に対して悲観することもない。若い世代はまだその悪癖に染まっていないからである。

若い起業家が興したベンチャーは、最初からダイバーシティを当たり前だと考え、前例踏襲型の大企業に対してのチャンレンジャーとしてのビジネスチャンスを虎視眈々と狙っている。自ら起業を企てる若者はまだ少数派かもしれないが、ベンチャー的な企業に魅力を感じて入社する若者は増えている。

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