係員には支援員を3人付けている。そのうちの1人はジョブコーチ(障害の特性に合った職場環境を作る役割を担う)を兼ねる。岡山さんはチーム作りや係員の育成は病棟スタッフに任せ、トラブルが起こったときに病棟で対応するだけにとどめている。
「世の中で生きていくことは本当に大変で、係員によっては、それに応えられないかもしれません。でも、頑張らないといけないんです。病院スタッフの中には厳しいことを言う人もいますが、『私たちが応援するから、頑張っていこか』という感じです」と岡山さんは話す。
1時間に100枚折るのが目標
知的障害のある三浦大輝さん(23歳)も、前出の角谷さんと同じように同病院で働き始めて5年目になった。
三浦さんは、病棟で大量に必要となるタオルを三つ折りして袋詰めしたり、おしぼりや患者の体を拭くための清拭(せいしき)用タオルを整理したりする。係員の業務の中で、タオルの三つ折りは「基本作業」として位置付けられるほど重要視されている。
タオルは病院のあらゆる診療科で使うため、1日約2200枚必要になる。三浦さんら係員は、ホコリや髪の毛が付いていないか、ホツレや破れがないかを目視で確認してから、きちんと折りたたむ。角が少しでもずれていると、袋詰めしたときに先輩係員から注意され、折り直しになる。三浦さんは1時間に100枚折ることを目標にしている。
三浦さんは病室の清掃チームにも入る。2~3人でベッド回りや床を清掃したあと、ベッドメイキングもする。シーツの角を折りたたむことは難しいが、ていねいに作業する。
チームワークを崩さないよう作業することに留意しているが、強い口調で注意してくるチームメンバーとのコミュニケーションは苦手だ。決まっていることをやらない人に対して、注意することもできない。
こんなふうに、障害の特性によって起こるコミュニケーションの難しさに悩んだり落ち込んだりしたときは、岡山さんに相談している。
三浦さんはまた、障害の特性からいつも体が動いてしまう。入職時には周囲から「落ち着きがない」と批判された。急いで処置をしているスタッフのそばに近寄ってしまうなど、場の空気を読みづらい弱みもあった。
そんなとき、岡山さんは「スタッフとの信頼関係が構築できない理由は、作業の種類や人間関係のマッチングが悪かった」と考え、持ち場を異動させる。三浦さんも異動後は、とても働きやすくなった。
「彼らは、すでに十分頑張っています。信頼関係を築けないのであれば、同じ持ち場で頑張らせるのではなく、異動してもらったほうが彼らにとっても気持ちが安らぐと考えます」と岡山さんは説明する。
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