一定数以上の従業員を抱える事業主には、障害者の雇用が義務づけられている。雇用者に占める身体、知的、精神の各障害者の割合を定めたものが「法定雇用率」だ。今年4月、その法定雇用率が2.3%から2.5%に変更された。
企業は従業員40人ごとに、障害者を1人雇わねばならない。従来の基準でも達成率は50%ほどにとどまる中、国は段階的に雇用率を引き上げていく方針で、2026年度には2.7%となる。企業側の対応は急務だ。
一方、法定雇用率の対象とならない小規模な会社であっても、障害者を純粋な「戦力」として評価し、積極的に採用するケースもある。公的な優遇制度を活用しながら、人手不足の解消に取り組む現場を追った。
彼女がいないと仕事が回らない
従業員のタイムカードチェックや郵便物の受け取り、納品書や受注票の作成。大型のモニターに表示された、多岐にわたる業務リストを見つめる真剣なまなざし――。
神奈川県小田原市のプレス加工会社「川田製作所」で事務員として働く佐々木彩花さん。高卒で入社して9年目だ。記者が訪れた4月、事務所内をせわしなく動き回り、1つずつ確実に業務をやり遂げてはパソコン上のチェックリストで完了ボタンを押していた。
佐々木さんは発達障害を抱えている。指示された仕事は正確にこなせるものの、曖昧な依頼が苦手と話す。
例えば、「この資料を3~4枚ほどコピーしておいて」などと言われると、何枚なのか決められなくて混乱してしまう。そこで事前に「いつ、何をするのか」という一覧表を作成し、それに沿って動いているというわけだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら