川田製作所は従業員20人ほどの小さな会社で、総務担当は佐々木さんしかいない。年末調整の手続きなどもこなすが、これはインターネットを駆使して自ら知識を学んだ。
最近は生産管理の作業にも挑戦して職域を広げている。業務リストに登録済みのタスクは計115種類に上る。
同社の川田俊介社長は「彼女がいないと回らない。わが社が誇るスーパー総務です」と胸を張る。佐々木さんも「たいしたことないです」と照れくさそうに笑いながら、「仕事は楽しい。成長できている実感があります」と充実した表情を見せた。
実は佐々木さんを採用した際、最終面接に進んだ候補者は3人いて、あとの2人は健常者だった。なぜ、あえて障害を抱える佐々木さんに内定を出したのか。川田社長はその決め手をこう語る。
「障害の有無は関係なく、ウチに合うかを考えた結果です。彼女は高校でパソコン部に所属し、就職を見据えてワードやエクセルの資格を取得しています。目標へ向かって努力する姿勢を感じられました」
5人雇用は必要な人材として選んだ結果
入社当初の佐々木さんは、コミュニケーション面で同僚とうまくいかないこともあったという。そこで川田社長は現場のリーダー格の社員を中心に勉強会を何度か開いた。札幌市がウェブ上で公開している資料「発達障がいのある人たちへの支援ポイント『虎の巻シリーズ』」を用いて特性を学んだ。
佐々木さんからも要望を聞いたうえで、周囲が具体的な指示を出すように心がけると、本人もそれに応えて懸命に働いた。成果が上がるようになると、徐々に信頼関係が醸成されていく。その過程で業務の内容を明確化したことで、無駄が減って効率化が進む効果も得られた。
資金力が乏しい中小企業には、余計な人員を雇う余裕がない。そんな中、川田製作所では、佐々木さんを含めて計5人の障害者が働く。区分も精神や知的、身体障害とさまざまだ。
従業員の少なさから法的な義務は負わないものの、雇用率は法定の2.5%を大幅に超過。もちろん、1人ひとりが主力として活躍している。川田社長は「積極的に障害者を受け入れているという意識はない。会社に必要な人材を採用していたら、結果的にこうなった」と説明する。
一方、障害者ならではの公的な優遇制度をフル活用しているのも事実だ。とくにメリットを感じるのは、障害者雇用のトライアル制度という。
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