2021年秋。建設現場への人材派遣を生業とするアーキ・ジャパン(東京都新宿区)に激震が走った。行政側から連絡があり、障害者雇用に取り組まないのであれば、障害者雇用促進法に基づいて企業名を公表すると通告されたのだ。
一定数以上の従業員を抱える事業主には、障害者の雇用が義務づけられている。雇用者に占める身体、知的、精神の各障害者の割合を定めたものが「法定雇用率」だ。2.3%(現在は2.5%)の基準をアーキ・ジャパンは満たしていなかった。
同社は2007年設立。2021年2月に国内投資ファンドJ-STARの傘下に入り、4月には東証プライム市場に上場する人材派遣のUTグループの出資も受けたばかりだった。経営が新体制へと移行し将来的にはIPO(新規株式公開)も視野に入れる中、企業イメージを傷つけるのは避けたい。
「突然のことで本当にびっくりした。問題があるとは知らなかった」。この年の7月、外部から就任したばかりだった吉田周平社長はそう振り返る。
「どう採用すればいいか」という壁
アーキ・ジャパンは当時、顧客の元へ送り出す派遣社員を約1000人、それを管理する社員を約120人抱えていた。「詳しい理由は不明だが、先代経営者の時代は管理部門だけに法定雇用率が適用されると勘違いしていたようだ」(吉田社長)。その場合の基準は達成できていたという。
ただ、実際は取引先へ派遣する社員も算定対象となる。結果的に数十人規模で雇うべき障害者が不足していた。それを指摘され、改善を求められたというわけだ。
吉田社長はすぐに部下へ指示を出し、法定雇用率を満たすための3カ年計画を作成。翌2022年からスタートし、初年度は様子見で数人を採用、残りの2年で不足分を雇いきるという内容だった。これを提出して猶予期間をもらい、不名誉な企業名の公表はひとまず回避した。
ところが、大きな壁が立ちはだかる。障害者を雇用するためのノウハウが社内になく、どうやって採用すればよいのか、まったくわからなかったのだ。
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