障害者を雇用すると企業の業績が伸びる理由 「慈善事業ではなく、経営戦略の一環と考える」

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かげやま・まこや 横浜市立大学教授。1959年、静岡県生まれ。早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程修了。専攻は経済原論、経済システム理論、地域CSR(企業の社会的責任)論。CSRの観点から障害者が経営に与える影響を研究しており、厚生労働省の労働政策審議会障害者雇用分科会で公益代表委員も務める。2023年11月には、日本障害者雇用促進事業者協会の研究顧問に就任(筆者撮影)
一定数以上の従業員を抱える事業主には、障害者の雇用が義務づけられている。全体の雇用者に占める身体や知的、精神障害者の割合を定めたものが「法定雇用率」だ。この4月、その法定雇用率が2.3%から2.5%に変更された。従業員40人に1人は障害者を雇わねばならない。さらに2026年度には2.7%に引き上げられる予定だ。
満たせない場合、罰金の支払いや行政指導、企業名の公表などのペナルティーがあるものの、従来の2.3%でさえ達成率は約50%にとどまる。こうした状況の中、企業は障害のある労働者とどう向き合うべきなのか。『なぜ障がい者を雇用する中小企業は業績を上げ続けるのか?』(中央法規出版)などの著書がある経済学者、影山摩子弥・横浜市立大学教授に聞いた。

健常者の業務パフォーマンス良化

――障害者を雇用すると、企業にはどのようなメリットがありますか。

統計学の手法で分析したところ、業績に好影響をもたらすとわかった。どれぐらい良くなるかは業界ごとに違うので一概には言えないが、数字が伸びるのは間違いない。

ただ、単に雇用しているだけでは駄目。健常者の社員が障害を持つ社員と深く接していることが条件となる。難しい話ではなく、日常的な作業や打ち合わせを一緒になって取り組んでいけば十分だ。

中小企業のほうが目に見えて成果を上げやすい。人数が少ない分、1人あたりの障害者との接触が密になるからだ。経営の体力が少ないため、賃金を払うからには障害者も戦力にならないと困ってしまう。会社全体で支えようという機運が高まりやすい。

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