障害者はできること、できないことが明確で、周りに合わせられない。職場にダイバーシティー(多様性)を持ち込み、他者を尊重しようという雰囲気を醸成してくれる。
すると、異なる考えを持つ人間が組織内に増え、自由にアイデアを発言できるようになる。議論を深めていくと、イノベーションが生まれる。
最近は子育て中の女性が働けるとか、男性の育休取得率が高いとかで、ダイバーシティーを語る企業が多い。だが、そんなことは当たり前の話で、誇るものではない。障害者雇用こそが、成長の土壌を作り出すカギだ。
――障害者に職場で活躍してもらうためには、具体的にどうしたらいいのでしょうか。
まず必要なのは、経営的な戦略だ。現場任せでは失敗する。多くの健常者は障害者と密に接した経験がない。共に働けと言われても、最初は不安や不満も生じる。それでも、上層部が決めた方針ならやってみようと思える。
障害特性と業務のマッチングが重要
成功した企業を見ると、社長が率先して障害者を気に掛けるケースが多い。部下たちはその姿を見て安心するのだろう。ただ、規模が大きい会社では難しいので、障害者と健常者を仲立ちする、クッションのような役割の社員を現場に置くとうまくいきやすい。
そして、最も重要なのは障害特性の把握だ。身体障害者は外見で状態をつかみやすい。一方、知的や精神の障害は症状がさまざま。先入観を持たず、その人に向いている業務とマッチングさせれば、やりがいを持って働ける。健常者以上の能力を発揮する人もいて、お互いに仲間だと認め合えるようになる。
――福祉に詳しくない一般社員は、知的や精神の障害特性をどう把握するのですか。
そうした障害者にはたいていの場合、地域の支援者が付いている。特別支援学校の教員や就労支援施設の職員らだ。彼らに相談すれば、有益なアドバイスを得られるだろう。
当事者とのコミュニケーションは大切だが、必ずしも本人が自分自身を理解しているとは限らない。業務を切り出す際は支援者に自社の職場を見せ、やれる仕事を一緒に考えるべきだ。支援学校の先生に作業を体験してもらったり、障害者をインターンで受け入れたりするのも効果的だ。
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