注目すべきはクラウドと広告だ。
生成AI革命が巻き起こった2023年、米国の巨大IT企業5社「GAFAM(ガーファム)」の主役は、間違いなくマイクロソフトだった。
生成AIの火付け役となった「チャットGPT」の開発会社・米オープンAIに対し、19年に10億ドルを出資していた同社。その世界的なブームが巻き起こった直後、23年1月には数十億ドルの追加出資を表明する。
その後も素早い動きを見せた。
1月、オープンAIのLLM(大規模言語モデル)をクラウドインフラ「マイクロソフト アジュール」上で利用できるサービスを開始。チャットGPTよりもセキュリティーを高めた形で利用できることから、すでに1万8000以上の組織で導入されている。
「アマゾン猛追」のラストピース
電撃戦を仕掛けたのは、14年から3代目CEO(最高経営責任者)を務めるサティア・ナデラ氏。オンプレミス時代の製品群で稼いできた同社の経営軸を、クラウドサービスへと転換し、右肩上がりの成長軌道に乗せた人物だ。
とくにクラウドインフラ市場においては、圧倒的な首位だったアマゾン・ドット・コムを猛追。23年11月に調査会社カナリスが発表した最新四半期のシェアでは、アマゾンが31%、マイクロソフトが25%と、6%ポイント差まで迫っている。
今年に入って加速した生成AIの戦略は、周到に仕込まれた「アマゾン猛追」のラストピースだったというわけだ。
目下、マイクロソフトは生成AIアシスタント「コパイロット」にも注力。11月、「オフィス」やビデオ会議「チームズ」などを包含したクラウドサービス「マイクロソフト365」向けに月額30ドルで導入したほか、OS「ウィンドウズ」から検索エンジン「ビング」まで、次々と自社製品へ実装していった。
ナデラ氏も11月の開発者会議で「われわれのビジョンは非常に単純。コパイロットカンパニーだ」と宣言するほど、大きな期待を寄せている。
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