生成AI電撃戦を仕掛け、世界を熱狂させた巨大IT企業の実像とは。
坂の多い港町を、カモメが優雅に飛び交う。断続的に降るミストシャワーのような霧雨に、地元民たちは傘1つ差そうとしない。これが、アメリカ西海岸に位置する閑静な都市、シアトルの日常なのだろう。
自然豊かな環境で、海産物や農産物の産地としても知られるが、実は世界的企業の重要拠点が集積する地でもある。ECの巨人であるアマゾン・ドット・コムや、人気カフェチェーン・スターバックスの本社、任天堂のアメリカオフィス……。
豪華な顔ぶれの中でも、ひときわ“アツい”企業の本社がこの街にある。マイクロソフトだ。
この1年余り、テック界隈から投資家まで世界中を熱狂させたマイクロソフト。「生成AI電撃戦」を仕掛けて“革命児”の印象を植え付けた一方、それ以前から、7期連続で増収増益を達成してきた優等生でもある。2023年初頭には2兆ドルに満たなかった時価総額は、足元で3兆ドルを突破。アップルを抜いて世界首位に躍り出た。
その「熱源」を探るべく、記者は3月初旬にシアトルの本社に足を踏み入れた。
気付いたら東京ドーム30個分の敷地の中に
シアトルのダウンタウンから、車で30分ほど北東に向かう。車窓から風光明媚な名山・マウントレーニアを眺めていると、いつの間にか、日本でもお馴染みの4色ロゴが掲げられた建物が建ち並ぶエリアに入っていた。
「ここからマイクロソフト本社地区」と案内する標識や、柵のようなものはない。公道を挟んで、約1400万平方フィート(東京ドーム約30個分)に及ぶ広大な敷地に100以上の施設が集まっていることから、記者はてっきりまだ街の中にいるのだと錯覚していた。
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