「ニセ科学本」を憂う74歳・伝説の理科教育者の戦い 人はなぜニセ科学にこうも騙されるのか?

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「つまり90%以上が信じちゃうかもしれない人たちなんですよ。だます側の人が言ってるんだから、真実味があります。認知心理学から見ると『信じるのが当たり前。信じない人がいるのが不思議』なんです。

抵抗者みたいな人は、何事においても懐疑的なわけですよ。表からだけじゃなくて、横からも裏からも見る。なんなら臭いも嗅ぐ。何か説明しても『ちゃんと根拠を見せろ!!』と言ってくる。これって人としては、面倒くさい部類じゃないですか。人と人が協力しあって生活していく中では、相当鬱陶しい人間ですよ。そういう人は世の中に少ないんです。それにそもそも人間の『脳』が、ニセ科学を信じやすいようにできてるとも思います」

(筆者撮影)

頭の良い人がニセ科学にハマると、逃げられなくなる

人類は森林の木から降りて草原で生活するようになった。草原には草木に潜む敵がたくさんいた。草木の隙間などから一瞬見えた情報から、瞬時に「敵」「獲物」「味方」を見分けて、行動を起こさないと生き延びられなかった。

「つまり『部分的な情報を見て全体像を想像する』というのを我々人類はずっと当たり前にやってきた動物なんです。だから、断片的に『正しそうなこと』を並べられ、その上で『ニセ科学』を提示されたら、信じてしまうのが自然なんです。これは頭の良し悪しはあまり関係ないんですよ。むしろ頭の良い人がニセ科学にハマると、自分で勝手にニセ科学を補強してしまって、そこから逃げられなくなります」

確かにオウム真理教の事件の時は、高学歴の信者がたくさんいたことが話題になった。

「ニセ科学が医療現場に入ってくると、命に関わることもあります。著名人ががんの治療を拒否し、代替療法に頼った結果亡くなってしまったという悲しい話も耳にします。やっぱり、ニセ科学を防ぐにはよりたくさんの正しい情報を頭に入れるべきだと思います。学んでいくと、段々見分けがつくようになると思います。

ちなみにニセ科学では『波動』という言葉が使われることが多いので『波動』を見たら注意してください。科学の用語にも『波動』があるので、注意しないとだまされてしまうんです」

世の中には様々な考えがあるし、たとえ間違っているからと言って一概に「信じてはいけない」ということはない。ただ、盲目的に信じてしまって、後で良からぬ結果になり、一生を後悔で過ごすのはあまりに悲しい。

左巻さんの本は非常に読みやすく、理解しやすい。一読するのは決して損はないと思う。

左巻さんには、これからもワクワクするような科学の本を書き続けてほしいと思った。

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村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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