京都工芸繊維大学に教授として採用されることになった。この大学には3年在籍し、その後同志社女子大学で教授として4年間在籍、法政大学で教授として11年間在籍した。
定年まで勤め上げ、現在も東京大学非常勤講師として教鞭をとっている。
学生からニセ科学本を紹介されて…
多数の本を執筆されている左巻さんだが、最初に出版したのは1988年、35年も前になる。
「最初は先生向けの雑誌を出している出版社で、先生向けの本を書いていました。実験の本とか、化学のちょっとした小話集とか。それが意外と売れて、その後、一般向けの科学の本も書くようになりました」
前編の冒頭でも触れたが、左巻さんの本は表紙に名前が載っている本だけで300冊を超えている。7割ほどは出版社からの依頼で執筆し、3割は「こういう本を考えてるんだけどどうかな?」とご自身から声をかけるという。
2007年に『水はなんにも知らないよ(ディスカヴァー携書)』の上梓を皮切りに『ニセ科学を見抜くセンス(新日本出版社)』『陰謀論とニセ科学 - あなたもだまされている -(ワニブックスPLUS新書)』と何冊もニセ科学についての書籍を出されている。
どうしてニセ科学をテーマにしたのだろうか?
「同志社で教授をしていた時代に、学生からある本を紹介されました。水に対するニセ科学本だったのですが、学生は『感謝の言葉を水に与えると、結晶がきれいになるんですよ。感動しました』と言ってきました。これには面食らいました。賢いと言われている大学の学生が、こんなことを言うのかって……」
実は学生が持ってきた本にはかねて因縁があった。
左巻さんは2002年に『おいしい水安全な水(日本実業出版社)』という本を出版していた。
「水についての決定版にしようと思って気合をいれて書いた本でした。書店に行くと平積みされていて評判も良いようでした」
左巻さんの本の隣には、例のニセ科学本が置かれていた。
「こんな本もあるのか。いや、売れないだろ。と思っていたのですが、僕の本なんか比べ物にならないくらい売れました。ただ、売れるだけならいいのですが、社会的な悪影響もありました」
その本をもとに道徳の授業が行われたり、学校の校長の集まりでその本の関係者の講演が開かれたり、その本を題材にした絵本が各学校にばらまかれたりした。ニセ科学が学校に蔓延していった。
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