「どんな本を読むべきか」と問う人の深刻な問題 "稀代の読書家"が勧める「人生を変える読書術」

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読書は自分の可能性を広げてくれる(写真:プラナ/PIXTA)
3万5000部を突破した『読書大全』の著者・堀内勉氏が、このたび『人生を変える読書』を上梓した。
稀代の読書家である氏が、ビジネスパーソンに対して「読書の価値」や「好きから始める読書術」について解説する。

私が当惑する「ある質問」

「どんな本を読めばよいですか?」

講演会やセミナーなどで、ビジネスパーソンや学生など、さまざまな方とお会いするたびに、必ずこのような質問をいただきます。

そのように聞かれる私はじつはかなり当惑している、というのが正直なところです。もちろん、お尋ねの意図が明確な場合には、できるだけその質問の意図に沿った形でお答えするようにしてはいますが……。

たとえば「ファイナンスの教科書で何かよいものはありませんか?」と聞かれれば、その方がファイナンスを勉強する目的や、現時点でのファイナンスの知識などを考慮したアドバイスを差し上げることはできます。

ファイナンスの初心者ならまずはこの基本書を、ある程度の実務経験を積んだ上級者ならこの実務書を、という具合にです。

もし、みなさんが何か具体的な目的にかなう本を求めているのであれば、各分野に定番といわれる本がありますから、それぞれの分野にくわしい人に聞いたり、書評などを参考にしたりすればよいでしょう。

ただ、もっと一般的な質問として、「どんなものを読めばよいですか?」と聞かれてしまうと、簡潔に答えるのは難しくなります。

なぜなら、その方がどのような人で、これまでどのような人生を歩んでこられたのか、その中でどのような考えや価値観を身につけて、いまはどのような気持ちで生きていて、何を求めていらっしゃるのかをまったく存じ上げないからです。

非常に突き放した言い方をしてしまえば、「本当にそれが聞きたいのであれば、自分自身の胸に手を当てて聞いてみてください」としか答えられないのです。もちろん、それでは何も答えたことにはなりませんが……。

さはさりながら、「どのような本を読めばよいですか?」と聞かれる機会があまりに多いので、なぜそのような質問が多いのだろうかと、自分なりにその理由を考えてみました。

「どのような本を読めばよいかは、どう考えても自分にしかわからないことのはずなのに、どうしてほかの人にそれを聞こうとするのだろうか?」と。

次ページ質問の裏にひそむ「深刻な問題」
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