新幹線通勤ママが選んだ「家族の形」とは? 無理して東京に住む必要はありません!

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ところがそう考えていた矢先に、会社から「どうしても戻ってくれ」とお呼びがかかる。急な事業拡大により営業要員が足りなくなったのだ。自分が必要とされているということがうれしくて、毎日新幹線で通勤することを本気で考えるようになった。「電話やメールでの連絡、提案書の作成といった書類仕事は場所を選ばない。お客様に会う時間さえ作ることができれば、長野を往復しながらでも仕事はできると思いました」(平山さん)。

義両親の手厚いサポートが支えに

待機児童問題とはほぼ無縁の地域だ。”保活”を始めるとわずか3日で保育園が決まった。さらに平山さんの背中を大きく押してくれたのは、すぐ近くに住む夫の両親だ。平山さんの仕事を積極的に応援し、子どもが病気になれば平山さんが休まずに済むようサポートしてくれるという。

遠距離通勤をしている親が思い悩むのは、地震などの災害時のことだ。頭に浮かぶのは東日本大震災時に経験した帰宅困難状況。何かあったときにはすぐに子ども、家族の近くに駆けつけたいと思う人は多い。

だが、平山さんは言う。「万が一、私が災害に巻き込まれて帰ることができなかったとしても、長野にいる子どもは夫や夫の家族が近くにいるので安心です。住宅が密集しているわけでもなく、海にも遠い。浅間山の噴火口も自宅と逆の方角を向いているとのこと。東京での子育てよりも安心しています」。

近くに住む夫の2人の妹とその家族も頻繁に実家を訪れ、大家族で食卓を囲むこともしばしば。現在、その実家は二世帯住宅にリフォーム中だ。来年からは義両親と平山さん家族の同居が決まっている。「これで小1の壁に悩むこともなさそうです」と平山さんは笑う。

選んだのは夫婦の勤務地の中間地点

森永製菓で新規事業の立ち上げを担当している金丸美樹さん(39)も、新幹線通勤ママのひとりだ。群馬県高崎市に7歳の子どもと2人で暮らしている。高崎駅近くのマンションから港区の職場まで、通勤時間は1時間強。この生活もかれこれ7年目に突入した。

夫は新潟の会社に勤めている。結婚当初は夫婦がそれぞれ新潟と東京に住み、週末婚スタイルで生活をしていた。08年に出産。育休中は新潟で家族3人そろって過ごしたが、復職して東京に生活拠点を戻そうというとき、大きな問題に直面する。保育園が見つからないのだ。都内あちらこちらの保育園を見学したがその待機数に驚くばかり。いくつもの区役所に申請を出したが、住む場所も決まっていない金丸さん親子に担当者は苦笑するばかりだったという。

やむをえず新潟からの新幹線通勤を真剣に考え始めたとき、ふと高崎という駅名が目に留まる。東京で新潟から通勤するなら2時間以上かかるが、高崎なら1時間。しかも待機児童問題に悩まされることもない。ある日、子どもを抱きながら高崎駅に降り立ってみると、その街の雰囲気は思っていた以上に自分にしっくりきた。

見学に行った駅近くの保育園には、都内に通勤している親も数多くいた。街はきれいで、地域の人たちにも”よそ者”を温かく迎え入れる雰囲気がある。夫も自分も通勤できる距離だ。たちまち高崎が気に入った金丸さんは、ここに住まいを構えることに決めた。

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