「政府は少子化対策の一環として“すべての女性が輝く社会”と言うけれど、それはつまり“すべての男性が家事・育児をする社会”ということだと思います」
そう話すのは、博報堂に勤務する宮本英明さん(40)だ。
宮本さんは妻と娘の3人家族。出張も多く忙しい毎日を送っていたが、妻が体調を崩したことにより3年前から家事を全面的に担当。2014年には休職し、妻のサポートのために家事、育児に正面から取り組んだ。
「休職中、家事など大変だったでしょうと言われたが、正直言うと、仕事をしないで家事などに専念できるのはありがたかった」と振り返る宮本さん。
“ガチイクメン”な毎日を送るなかで、次第に育児を取り巻く環境のおかしさに気づくようになった。
夫は何している?どこかおかしい育児環境
たとえば、娘の幼稚園のお迎えに行くと、園のママたちは「パパは仕事ばかりで帰りが遅い」とそろって夫の愚痴をこぼし、子供たちは土日も母親と遊んでいる。さらに祭りなど地域の行事も、参加している男性はシニア世代ばかりで父親世代の姿はない。一方で、幼稚園で少数派のワーキングマザーたちは、子供の送迎や病気時のお呼び出しなど、育児と仕事の間でギリギリまで追い詰められ、疲れ果てている。
「こうした子育て現場を目の当たりにして、(東京だけかもしれないが)日本の育児環境はなんておかしいのだろうと思いました」
妻の病状が安定し始めたことで、自分も復帰へ向けて仕事と育児・家事との両立のコツが知りたいと思い女性誌を開くと、誌面は“いかに仕事や家事を効率化するか”の記事ばかり。
「正直、地獄だと思いました。何もかも徹底的に効率化して頑張らなきゃいけないなんて、息もつけない」
何より気になったのは、この状況を当事者の女性同士で「お互い大変だ」となぐさめ、励まし合うことで乗り切ろうとしていることだった。
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