前例なし「M-1グランプリ」誕生の知られざる舞台裏 ミスター吉本「漫才を盛り上げてほしいんや」

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そもそも漫才とは、ふたりのしゃべりだけで世界をつくり、客を引き込み笑いを起こさないといけない。それには、いいネタをつくった上で、何度も何度も稽古をしてふたりの息と間を合わせる必要があった。
その息と間を身につけるには粘り強い稽古が必要で、しかも誰でもできるものではなく才能が必要だった。
その点コントであればセットや小道具、衣装、照明、効果音などを使って世界観はつくれる。そういうものの助けがあってコントを演じればいいので、漫才に比べるとハードルはかなり低いと言える。言葉だけで世界をつくらなければならない漫才とはスタート時点からして違う。特に、しゃべりがまだ拙い新人レベルにはとっつきやすかった。ネタさえしっかりしていれば新人でもそれなりに見られるものができる。(44ページより)
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モヤモヤを解消してくれたのはこの文章だった。要するに、かつて漫才のおもしろさに魅了された私は、いつしか潮流がコントに移っていたことを知らなかったのである。だからただ漠然と、「なんだか違うなあ」と感じるしかなかったのだ。

でも、そのことに気づいたら、本書で明かされている漫才コンテスト「M-1グランプリ」創設までのストーリーが断然おもしろくなった。

ちなみにご存じのとおり、著者は吉本興業において横山やすし・西川きよし、笑福亭仁鶴、間寛平などのマネジャーを経験し、「なんばグランド花月」などの劇場プロデューサー・支配人、テレビ番組プロデューサーを経て、2001年に「M-1グランプリ」を創設した人物である。

漫才を盛り上げてほしいんや

話は2001年からスタートする。1981年に吉本興業に入社し、すでに43歳になっていた著者は、あるとき「ミスター吉本」と呼ばれる木村政雄常務からこう告げられるのだ。

「今度、漫才と新喜劇のプロジェクトをつくることにした。両方とも今低迷しているやろ。それを盛り上げてほしいんや。新喜劇は木山に、谷には漫才プロジェクトのリーダーをしてもらう。部署を横断して漫才を盛り上げていくプロジェクトや」(10ページより)

具体的になにをするのかはよくわからなかったものの、当時の部署ではやりがいを失いかけていたため、「漫才好きな自分にとってはいい話ではないだろうか」と感じたという。

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