不安な子に「大丈夫」と言ってはいけない納得理由 その一言が子どもに悪影響を及ぼす

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ほかにも、私たちの「ペアレンティング・トレーニング」を学んだ親御さんの中に、素晴らしいエピソードがあるのでご紹介します。

マキ(小5)は、学校の合唱祭でピアノの伴奏をやりたいと、校内オーディションに応募しました。張り切って一生懸命練習をしていたのですが、何とオーディションの数日前にインフルエンザにかかってしまいます。結局、マキはオーディションに参加できず、伴奏者はほかの子に決まってしまいました。

「失敗」したときこそ、脳育てのチャンス

落ち込んで大泣きしているマキ。しかし、お母さんは冷静に、「ここはチャンスだ!」と考えました。「自分が健康な状態を保つことができなければ、大切なチャンスを失うことがある」とマキはこの経験で身をもって知ることができたからです。

お母さんは、マキの悔しい、やるせない気持ちをじっくりと聞いてあげました。子どもが感情的になっているときには、「次のチャンスにまた頑張れば、いいことがあるよ」などと正論を言うのは禁物です。まずは、子どもの声に耳を傾け、認めてあげる。「共感」「傾聴」という態度が、子どものストレスを和らげていきます。

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するとある日、「合唱祭は来年もあるから、今度は体調を崩さないようにしてオーディションを受ける」とマキは言いました。お母さんは「そういうふうに考えられるのって、すごくいいね」とだけ伝えました。

翌年、マキは体調管理を怠ることなく一生懸命練習をして、見事オーディションに合格。合唱祭を聴きに行ったお母さんは、誇らしげに演奏する娘の姿をとても頼もしく感じたそうです。「信頼のパーセントを増やすことができました!」と笑顔で話されていました。

親が子どもにどれだけ的確なアドバイスをしたとしても、失敗をすることはあります。しかし、子どもが失敗したときこそ、「脳育てチャンス」の到来です。どうすれば次にうまくやれるかを計画し、実行することは、すべて前頭葉の働きによるものだからです。

子どもが失敗したとき、親は一緒になって落ち込んでいる暇などありません。親は子どもの気持ちに共感・傾聴しながらも冷静さを保ちましょう。

つねに「一枚上手」の「知恵者」としてサポートしてほしいと思います。

成田 奈緒子 小児科医・医学博士、公認心理師

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なりた なおこ / Naoko Narita

子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。 1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。http://www.kk-axis.org/

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上岡 勇二 臨床心理士・公認心理師

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かみおか・ゆうじ / Yuji Kamioka

臨床心理士・公認心理師。子育て科学アクシススタッフ。1999年茨城大学大学院教育学研究科を修了したのち、適応指導教室、児童相談所、病弱特別支援学校院内学級、茨城県発達障害者支援センターで、家族支援に携わる。著作に、『改訂新装版 子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング 育てにくい子ほど良く伸びる』(共著、合同出版)、『子どもが幸せになる「正しい睡眠」』(共著、産業編集センター)、『ストレスは集中力を高める」(芽ばえ社)。

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