苦境のレゴを復活させた「経営者の直観」その中身 「すばやい対応」だけでは現状打破には不十分
なぜ考え方やものの見方を変えるのは難しいのだろう? 幼いころから何度も繰り返してきた結果、同じやり方や考え方が染みついてしまうからだ。
ためしに、次のパズルを解いてみよう。
ペンで、9つの点を4本の直線によって一筆書きでたどってほしい。一度もペン先を離さずに、だ。これは「ナイン・ドット・パズル」と呼ばれ、考え方を切り替える能力を試すものだ。慣れ親しんだ考え方を打ち破るのがいかに難しいか、わかるはずだ。
一見、単純そうに見えるパズルだが、なかなか手強い。答えを見れば、理由がわかるだろう。
慣れ親しんだ考え方に脳がとらわれるせいで、外側の点を結ぶ“箱”のなかで、線を引かなければならないと思うからだ。
このパズルが「箱の外を考える(型にはまらない考え方をする)」(thinking outside the box)という1980年代に有名になったマネジメントの決まり文句を生んだのではないかという説もある。
自分の思考が“箱”のなかにとらわれているとわかれば、このパズルは解きやすくなる。
細菌の発見は、古い考えから抜けだした成果
20世紀の傑出した経済学者ジョン・メイナード・ケインズも、「なにより難しいのは、新しい考えを受け入れることではなく、古い考えから抜けだすことだ」と述べているように、習慣となって染みついた考え方は振りはらうのが難しい。
細菌の発見は、古い考えから抜けだしたことで大きな成果が生まれた例だ。中世では、伝染病や疫病がつねに脅威だった。とりわけ気温の高い夏にはあっという間に病が広がり、とくに人口密度が高い地域では排泄物や生ごみの悪臭が鼻をついた。当時は、有機物が目に見えない蒸気を放出するせいで、悪臭が発生すると考えられていた。これが人間の体内に侵入し、生命維持に必要な機能を破壊するのだ、と。
この「悪い空気」は「瘴気」と呼ばれ、1300年代半ばにヨーロッパ全土で流行し、2億人の命を奪った黒死病(ペスト)のおもな原因と考えられていた。瘴気説を支持する証拠の大半は、1800年代になっても幅広い支持を得ていた。
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