苦境のレゴを復活させた「経営者の直観」その中身 「すばやい対応」だけでは現状打破には不十分

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ファン・レーウェンフックの顕微鏡による観察であきらかになった事実に、科学者たちが文字どおり「目を向ける」ようになるまでに200年以上の歳月がかかったわけだが、あらゆる可能性に心をひらけば、もっと早かっただろう。

人類の知識が大きな飛躍を遂げたのは、慣れ親しんだ物事を新たな視点と方法でとらえたからだった。新しい考え方に切り替えないと、大きな価値を秘めている情報を見逃しかねない。

「見たいものを見る」傾向がある

私たちには「見たいものを見る」傾向がある。それは、ひいきのスポーツチームの観戦中によく見られる。アメリカンフットボールの大学選手権の試合後におこなわれた、心理学の有名な実験が、この傾向をよく示している。

1951年、プリンストン大学対ダートマス大学の試合は、両校にとってシーズン最後の勝負だった。プリンストン大学には、この年、タイム誌の表紙を飾ったディック・カズマイアーというクォーターバックのスター選手がいた。これは彼が大学生として最後に出場する試合だった。試合が始まると、第2クォーターでカズマイアーがダートマスの選手から激しいタックルを受け、鼻の骨を折り、脳震盪を起こしてフィールドを去った。

その次のクォーターで、今度はプリンストンの選手がダートマスの選手の脚の骨を折った。その後、試合では悪意の応酬が続き、結局、プリンストンが13対0で勝った。試合が終わったあとも長いあいだ、フィールドには怒号とやじが飛びかった。

数週間後、それぞれの大学の雑誌がこの試合についてまったく異なる見解の記事を掲載した。ダートマス大学とプリンストン大学双方の心理学者たちは、双方の学生が「見ていた」試合は実際に異なっていたのではと考えた。そこで、ダートマス大学163人、プリンストン大学161人の学生に録画した試合の映像を見せ、質問票に回答を書いてもらった。

すると、驚くべき結果が出た。

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