医師も弁護士も生成AIを使いこなすべき理由 顧客視点で考える専門家の生成AI活用の極意
AIチャットボットが複数人の会話を聞いていて、話を進めたり、必要な情報提供をしたりすることも、今なら十分可能だ。会話の表出化(言語化)については、オンライン会議の音声をテキスト化して議論を要約する機能として、すでにマイクロソフトなどの製品レベルで提供されている。内面化では、アイデアからリアリティのある映像や音声を生成して、さまざま体験ができる環境が今後求められるであろう。
知的生産プロセスの後半、「③生産物を作る・決める」と「④社会価値を判断する」は、個人の意思決定と社会的評価であり、本来AIに代替させる意味はないはずだ。しかし、これらのプロセスもAIに任せたいと考えるユースケースは存在する。
たとえば、採用や入札など、自身の意思よりも、評価する側の社会(組織)の目を気にする場合である。つまり、AIが先回りして社会の評価を予測して(④)、評価が高そうな候補者の採用を決める(③)という流れだ。
そうなると、AIが生成して、かつAIが選んだものが世の中にあふれる。実際、AIが生成したコンテンツはネット上に増え続けており、2026年までに全体の約9割に達するとの予測もある。LLMが生成したものを学習データとして再び学習すると、LLMの性能は確実に落ちることも知られている。
信頼できるのは「AIを使いこなす専門家」
AIが支援しても最後は人間が決めて、質の良いアウトプットを作り、そのアウトプットを人間社会が評価するというプロセスが、AIにとっても健全なのだ。つまり、この意思決定と社会価値判断という領域とその支援については、まだ人間によってなされる仕事が重要だと言える。
冒頭の「3つのうち、だれ(どれ)が信頼できるだろうか」という問いへの答えは、②AIを活用できている専門家であり、これからの専門家は、AIをうまく使いこなしていくことが求められる。
進化するAIは、これまでうまく扱えなかった言葉やイメージのような情報に、確実にパワーを与えている。特定領域の専門家の暗黙知をいち早く言語化できれば、LLMを活用して、新たなナレッジ提供型のサービスも可能だろう。
一方、人間の役割は、企業や地域などさまざまなレベルで、社会との接点を活かすことにある。企業も個人も、これからの時代、AIとの協働に必要な「言葉にする力」と「評価する力」を磨くことが求められるだろう。
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