医師も弁護士も生成AIを使いこなすべき理由 顧客視点で考える専門家の生成AI活用の極意
暗黙知が言語化できれば、それに基づいた質問への回答や、プログラム言語への変換などが可能になる。暗黙知の言語化作業は、人間同士の何気ない会話や行動を観察することが必要で、AIはまだ人間にはかなわない。それでも自社の強みや課題を言語化することさえできれば、AIを用いて強化や解決に導くことが可能になってきたと言える。
この知的生産プロセスがAIに置き換わる
LLMの持つ卓越した言語能力は、これまでの生産性の低い長時間作業から人間を解放し、知的生産力の強化に役立つ。
知的生産性に関しては、日本には、半世紀以上前に今でも通用する実用的手法を提案した優れた先人たちがいる。川喜田二郎氏の有名な発想法「KJ法」や梅棹忠夫氏の「知的生産の技術」に共通するのは、「断片化」と「組み換え」のプロセスだ。
頭に浮かぶことを言語化する際、文章のようにまとまった形ではなく、小さなメモに書くように断片化して記録する。そして、それらを眺めて、組み換え、良い組み合わせを考える過程で、新たな価値に気づくというものだ。
さらにここでは、人間と社会(組織)での意思決定と評価まで含めることにして、知的生産を循環する4つのプロセスと定義する。
① 断片化して記録する
② 良い組み合わせを探る
③ 生産物を作る・決める
④ 社会価値を判断する
つまり、知的生産のプロセスとは、上記の①~④の繰り返しとなる。この知的生産プロセスの一部が、生成AIの登場で、人間からAIに置き換わる可能性がある。
「①断片化して記録する」と「②良い組み合わせを探る」がAIに置き換わるのは、生成AIのLLMの本質的な能力が、断片化と組み換えそのものであることからも明らかであろう。良い組み合わせを探る過程も、ユーザーが簡単な言語的な指示をすることによって、LLMがやって見せてくれる。
生成AIがナレッジマネジメントを支える
これまでインターネットの検索がいくら高速にできても、人間の知的生産力を上げることに直接役立つわけではなかった。文章、図、プログラム、人間がこれまで発明・発見してきた事柄など、すべてを断片化して、さまざまな組み換えを試す。このプロセスに生成AIを活用することで、新しいアイデアにつながりやすくなる。
このプロセスは、野中郁次郎氏と竹内弘高氏の提唱したナレッジマネジメントのフレームワーク、SECI(セキ)モデル(共同化→表出化→連結化→内面化)における「連結化」に相当する。さらに、それ以外の「共同化」「表出化」「内面化」というプロセスにおいても、LLM・生成AIが今後大いに役に立つだろう。
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