「ハイテク封建制」誕生の地「シリコンバレー」実録 自家用飛行機で環境問題を語る現代の「聖職者」

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シリコンバレー・北サンノゼのハイテク集積都市パロアルトにあるスタンフォード大学(写真:maeklong_commuter/PIXTA)
階級や格差の固定化、社会的地位上昇機会の喪失がもたらす「新しいかたちの貴族制」を徹底分析した『新しい封建制がやってくる:グローバル中流階級への警告』(ジョエル・コトキン著)が、このほど上梓された。本稿では、2000年代にシリコンバレーで起業家として活躍した平川克美氏が、同地で実際に見た「新しい封建制」の萌芽を、個人的な体験を交えて読み解く。

口癖は「いいビジネスモデルさえ見つかれば」

本書の感想を述べるにあたっては、私のかなり個人的な体験について触れることをお許しいただきたい。

新しい封建制がやってくる: グローバル中流階級への警告
『新しい封建制がやってくる:グローバル中流階級への警告』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

というのも、本書の第Ⅱ部で描かれる「ハイテク封建制」の舞台が、私がかつて小さな会社を立ち上げたシリコンバレーだからである。

本書の中心的なテーマである、「新しい封建制」の萌芽は、まさに私がその場所でベンチャー企業仲間との間で交わした会話の中に、すでに胚胎していたように思う。

私が知り合った多くの若者たちは、パンを齧りながら質素な生活をしているにもかかわらず、一握りの成功者を崇めていた。若者たちは、いつか自分たちも一攫千金の機会を狙って、アップルやマイクロソフトやアマゾンの創業者たちのようなテックジャイアントになることを夢見ているようだった。

なかなかビジネスの突破口を開けないでいた私たちの一人が「いいビジネスモデルさえ見つかれば」と口癖のように呟いていた。

アマゾンの創業者は、まさにその革命的なビジネスモデルによって巨万の富を稼ぎ出そうとしていた。アマゾン以前の全米最大の書店チェーンと言えば、バーンズ・アンド・ノーブルだったが、アマゾンは、在庫を持つことなくネット上にバーンズよりもはるかに豊富な書籍陳列棚を作り上げることに成功した。

「いいビジネスモデルさえ見つかれば」と言った同僚の言葉は、別の言い方をするならば、何かよい商品を開発したり、新規のサービスを市場に提供してお金を稼ぐよりも、アイデア勝負で金の埋まっている鉱脈を見出す方が手っ取り早いということだ。

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