「ハイテク封建制」誕生の地「シリコンバレー」実録 自家用飛行機で環境問題を語る現代の「聖職者」
そして今、この第三身分の人々が格差の拡大によって農奴化、奴隷化しきているのではないかというのが著者の見立てであり、昨今の先進諸国の状況を見ていると、著者の見解には強い説得力がある。では、この歴史の逆流を止める方法はないのだろうか。
ドアの鍵は労働者に手の内に
この問いに対して著者は具体的な指針を示してはいない。第三身分の政治的意志を目覚めさせることであり、彼らが自らの立場を堂々と主張する決意を奮い起こすことができるかどうかにかかっていると述べるにとどまっている。
しかし、本書の中に示された、封建制の崩壊や、富の一極集中に対する歯止めの具体例にこそ、現代のディストピアからの脱出のヒントが隠されているはずである。格差がこれ以上拡大し、多数の労働者たちの生存権が脅かされる事態になれば、共産党宣言の「万国の労働者よ、団結せよ」のスローガンが現代に甦るかもしれない。
ある時期、アメリカにおいても、日本においても、第三身分である現代のヨーマンや労働者が社会的に上昇し、「分厚い中間層」を形成した時代があった。
1950年代に大手自動車会社と自動車産業労働者たちの間でむすばれたデトロイト協約は、富の一極集中弱め、労働者の意識が高揚し、社会全体の経済は上昇した。
日本の1980年代もまた、ジャパン・アズ・ナンバーワンと評されるほどに分厚い中間層が活躍した。
あるいは、中小企業経営者や労働者の中から独創的で興味深い経営スタイルや働き方モデルを示す、先駆者が現れるかもしれない。
いずれにせよ、ディストピアの向こう側へ出てゆくドアの鍵は、超富裕層の手にあるのではなく、労働者の手の内にあると言うべきだろう。
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