「破壊から創造の新たな精神が生まれる」と1913年に書いたのはドイツの経済学者ゾンバルトだが、そうした議論を広め、拡張したのは、オーストリアの経済学者シュンペーターだった。
シュンペーターのアイデアは、経済学で経済成長論などの土台となっている。だが「創造的破壊」の概念を過去数十年でさらなる高みに押し上げたのは、関連した2つの出来事だ。1つは、「破壊的イノベーション」の概念を提示した米ハーバード・ビジネススクール教授クリステンセンの97年の著作『イノベーションのジレンマ』が大ベストセラーになったこと。既存企業は自身の事業モデルに固執しがちで、ゆえにテクノロジーの「次の大波」に乗り損ねる、という議論を展開した本である。
もう1つは、シリコンバレーの興隆だ。そこでは「破壊」がテック起業家たちの戦略となっていた。グーグルやアマゾンに続いて現れたのが、「素早く動いてぶっ壊せ」をモットーとするフェイスブックだった。私たちの社会関係やコミュニケーションを一気に変えたソーシャルメディアは、創造的破壊と破壊を同時に体現する存在だ。
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