「ホモ・デウス」支配の「新しい封建制」を防ぐ方法 社会的流動性の回復が守る自由主義的資本主義

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虐げられた人びとのあいだに生まれる鬱憤や不満、怨嗟や嫉妬。社会的地位上昇機会の喪失によってもたらされるこのような感情の爆発は、社会に無秩序を招きかねません(写真:metamorworks/PIXTA)
階級や格差の固定化、社会的地位上昇機会の喪失がもたらす「新しいかたちの貴族制」を徹底分析した『新しい封建制がやってくる:グローバル中流階級への警告』(ジョエル・コトキン著)が、このほど上梓された。同書訳者の寺下滝郎氏が、本書の概要とポイントを解説する。

『新しい階級闘争』と『新しい封建制がやってくる』

社会の階級分化はもはや押しとどめるべくもないところまできている。デジタル・テクノロジーの革命的進化の影響によって、私たちの生活のあり方は劇的に変化した。

新しい封建制がやってくる: グローバル中流階級への警告
『新しい封建制がやってくる:グローバル中流階級への警告』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

経済的・社会的格差も拡大の一途をたどっている。アメリカの歴史学者フレッド・シーゲルは、こうした今日の時代状況を的確に捉えた著作として、マイケル・リンドの『新しい階級闘争』とジョエル・コトキンの『新しい封建制がやってくる』を挙げ、この2冊はあわせて読むに値すると評している(「旧体制の復活」『クレアモント・レヴュー・オヴ・ブックス』2020年夏号)。

マイケル・リンドの『新しい階級闘争』は昨年すでに東洋経済新報社から邦訳が出版された(原書は2020年)。

そのリンドと問題意識を共有しつつも、リンドとはまた違ったアプローチの仕方で現状を分析し、未来を見据えた大胆な考察を行っているのが、このたび同社から出版されたジョエル・コトキンの『新しい封建制がやってくる』(原題:The Coming of Neo-Feudalism: A Warning to the Global Middle Class [Encounter Books, 2020])である。

リンドの考察が北米・西ヨーロッパ中心であったのに比べ、コトキンの考察の範囲はより広く、中国や日本など東アジアの動向も視野に収められている。

著者のジョエル・コトキンは現在、カリフォルニア州オレンジにあるチャップマン大学都市未来学プレジデンシャルフェローであり、ヒューストンを拠点とする都市改革研究所のエグゼクティブディレクターも務める。コトキンは、ポッドキャスト番組「Feudal Future(封建的な未来)」も主宰し、リンドもそこに何度かゲスト出演している。

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