「ホモ・デウス」支配の「新しい封建制」を防ぐ方法 社会的流動性の回復が守る自由主義的資本主義

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移民の受け入れに賛成するエリート層と反対する労働者・中流階級多数派との対立、サムウェア(どこかに)族とエニウェア(どこでも)族の文化的対立、長らくアメリカで忌み嫌われてきた社会主義を支持する若者の増加などの現象は、詰まるところ、人間の存在目的に帰着する。

省力化(人減らし)は、有用な仕事をしたいと望む人の尊厳を奪い、国家への依存心を高める人びとを増やすだけである(第15章)。

新しい封建制の地理学

第Ⅵ部は、新しい封建制の地理学。この考察は、都市研究家であるコトキンの真骨頂といえる。寡頭支配層や有識者層は都心部に住み、それを取り囲むように貧しい大衆が暮らす。この二分化は大都市に典型的な現象である。大都市の高密度化とジェントリフィケーション(高級化)により、コミュニティの社会的バラスト(安定装置)としての中流家庭は消滅しつつある(第16章)。

中流階級が縮小しつつある今日の都市世界は、産業資本主義時代の象徴である社会的上昇のエンジンとしての理想的な都市の姿とはかけ離れている。新しい封建都市の特徴は、「都市の魅惑ゾーンとスラム街」の分断と、子どもと家族(世帯)の消滅である。都市高密度化論者による郊外化批判は、中流階級を社会的に解体することにほかならない(第17章)。

新しい都市のパラダイムは、地方自治、階級の多様性、財産所有の拡大よりも、効率と中央管理を重視する(本書で「財産(property)」という場合、主に土地・家屋(持ち家)の「不動産(real property)」を差すと考えてよい)。デジタル都市、「ビットの都市」、スマートアーバニズム、「電子工学民主主義」など、テックオリガルヒの思うままの都市設計が進行中である。警察国家化が進む中国の監視社会は、私たちの未来都市文明モデルとなる可能性もある(第18章)。

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