[Book Review 今週のラインナップ]
・『資本とイデオロギー』
・『ジェンダー格差 実証経済学は何を語るか』
・『政治家・石橋湛山研究 リベラル保守政治家の軌跡』
・『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』
評者・BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
戦後、縮小が続いた経済格差は1980年代から反転し、一部の国では19世紀末のような世襲資本主義に回帰しつつある──。衝撃的論考で世界の話題をさらった『21世紀の資本』の姉妹編だ。
ハイパー資本主義の下で格差拡大が続けば、民主主義すら危機に陥る。解決策を探るべく、本書は近代以前の歴史を紐解(ひもと)くとともに非西洋にも射程を広げ、格差をもたらすレジームがつねに政治的に作られてきたことを示す。ならば格差は政治的に打破できるはずだ。1000ページ超の大著だが、目から鱗(うろこ)の連続にページを捲(めく)る手が止まらない。
外生的な危機が不在でも格差レジームの打破は可能だ
貴族と聖職者が支配した三層社会は、18世紀後半の市民革命で終わりを迎えた。だがその原動力となった財産権の絶対視は、以降の経済格差をむしろ悪化させた。19世紀の奴隷解放時も、虐げられた人々への補償がない一方、「財産」を失った元奴隷所有者には厚い補償がなされる。植民地では、入植者への補償が独立時の60年代まで続いたが、負担を強いられたのは現地住民、すなわち途上国の国民だ。
80年代以降の格差拡大の背景には、共産主義崩壊や自由な資本移動の下で続いた、税率切り下げ合戦がある。
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